面舵,取舵についての話題

プロローグ

昨年,映画「タイタニック」が話題になりましたが,特に造船,海運に関係する
人達にとってはその沈没のなぞに関して専門的な意味からも関心を呼びました。
その中でこれは技術者ならではの話題になったものです。

目次

番号

メール番号

テーマ

氏名

(1)

K-S 367

Titanic

大野 道夫

(2)

K-S 374

P or S

藤田

(3)

K-S 375

ReP or S(K-S 374)

大野 道夫

(4)

K-S 377

PORT/STARBOARD ON TITANIC

増田 勝巳

(5)

K-S 380

PORT/STARBOARD (補足)

増田 勝巳

(6)

K-S 381

Re:面舵,取り舵

三宮 一泰

(7)

K-S 382

Re: PORT/STARBOARD(補足)

長谷川 和彦

(8)

K-S 383

LARBOARD

大野 道夫

(9)

K-S 384

Port/Starboardへの思い

黒岩 道昌

(10)

K-S 385

LARBOARD/PORT/STARBOARD

増田 勝巳

(11)

K-S:386

PORT/TORIKAJI

大野 道夫


(1)
98-4-14(
K-S 367)「Titanic

大野 道夫 です。

藤田さんもご覧になりましたか。
小生F2Fの時に三宮さんが面白いと言われるので何十年ぶりかで
映画を見に行きました。

実際を忠実に再現して実物大の船を造り・・・・・中に出てくるLOVE
STORYだけが唯一真実と違うと言う事でした。

3時間もの長い間飽きる事無く、ぐんぐん引き付けられる映画でした。
唯一違う所に引き付けられて。

日本語で「面舵」と聞いた気がするのに取り舵が取られていたように
思いましたが、小生の聞き違いでしたでしょうか?

評判どおり面白い映画でした。若者にも大うけのようです。

では 又。

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  1. 98-4-17 K-S 374)「P or S
  2. 藤田です。KS-367で大野さん曰く
    >日本語で「面舵」と聞いた気がするのに取り舵が取られていたように
    >思いましたが、小生の聞き違いでしょうか?

    413日の日本海事新聞に海産研の長塚誠治氏が「映画タイタニック遭難シ−ン
    の検証」の中で次のように解説されています。

     タイタニック号が遭難した1912年頃は、面舵と取舵の定義が現在と逆で、国
     により異なり混同しやすかった。そこで
    1928年に国際的に統一され, 「面舵」は
    「右舷へ回頭、スタ−ボ−ド」、「取舵」は「左舷へ回頭、ポ−トサイド」に変更
    され、
    1931 6 月から実施された。従って氷山に衝突する直前、航海士が「ハ−ド
     ア スタ−ボ−ド」と命令し、船を左舷に回頭したが避けきれず、右舷側面に損傷
    を受け浸水し、沈没の原因となった。

    従って大野さんは正確に英語を聞き取っておられたのです。
    以上

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  3. 98-04-18 K-S 375)「Re P or S(K-S 374)
  4. 大野 道夫 です。
    藤田さん有り難うございました。

    よく理解できました。昔日本でもたしか舵柄で操作している時に 舵と舵柄が
    逆に動くので、よく右と左を間違えた。それで陸軍の 舟艇では其の侭右左を
    逆に呼ぶようにしたとか、しなかったとか。 うろ覚えです。

    藤田さんのメールで気が付きました。 小生英語は出来ません。
    正確に聞き取っている筈はありません。 眠い目をこすりこすり発信していたので
    記述を間違えました。

    日本語で「面舵」と「聞いた」ではなく「見た」ですよね。
    小生の「聞き違い」ではなくて、「見違い」です。
    今思い出すと画面を見ている時は、よく聞き取れなくていきなり
    「面舵」の文字が目に飛び込んできたように思います。

    あのようなパニックに近い緊急時には操舵命令の発令者も受令者も
    最高の緊張の中でもっと大声を上げてハッキリと発令し、アンサー
    バックもなされる物なのになあ。とその時感じました。

    大変失礼しました。
    しかし統一されたのが1928年とか1931年とかそんなに最近
    だったとは知りませんでした。勉強になりました。

     

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  5. 98-04-19 K-S377)「PORT/STARBOARD ON TITANIC
  6. 下川さんの kis-net ご投稿も含めて TAITANIC 談義、大変面白く拝見しております。
    私はまだ観ていませんので映画についての所感は申上げられませんが、
    P-S 論議に
    ついて一筆。

    [K-Senior:374](藤田さん)
    >
    日本海事新聞・・・タイタニック号が遭難した1912年頃は、面舵と取舵の定義が
    >現在と逆で、国により異なり混同しやすかった。そこで1928年に国際的に統一され,
    >
    「面舵」は「右舷へ回頭、スタ−ボ−ド」、「取舵」は「左舷へ回頭、ポ−トサイド」
    >に変更され、19316月から実施された。・・・

    2.[K-Senior:375](大野さん)
    >
    昔日本でもたしか舵柄で操作している時に舵と舵柄が逆に動くので、よく右と左を
    >間違えた。
    >しかし統一されたのが1928年とか1931年とかそんなに最近だったとは知り
    ませんでした。

    私も上記については知りませんでした。面白いですね。
    何かないかと、佐波宣平著「海の英語 イギリス海事用語根源」という本をめくって
    みました。期待したものは見えませんでしたが、古い古い文献の紹介がありました。

    Then know, Star-boord is the right hand, Lar-boord the left; Starbood the
    Helme, is to put the Helme a Starbood, then the ship will goe to the Larboord.
    Right your Helme, that is, to keepe it in the mid ships, or right up. Port,
    that is, to put the Helme to Larboord, and the ship will goe to the Starbood,
    for the ship will ever goe contrary to the Helme.
    (J. Smith: A Sea Grammar, 1627)

    上記は 左舷・取舵 の古語 larboard starboard と語音がまぎらわしく、海上
    事故をひきおこすことも稀でなかったので、
    "port" に改称されたことの検証の過程で
    引用されているものです。綴りは原文のまま。
    私は一瞬、
    TITANIC の海難も larboard starboard の聞き違いによるものかと
    思ったのですが、
    1840 年代には既に (世界的に) port に改称済とのことですから
    該当せず。

    とすると、面舵と取舵の定義が逆だったというよりも、上記の Sea Grammar が脈々
    と受継がれて来た反面、操舵装置の変革もあって混乱を来していたのではなかろうか
    と愚考する次第です。

    どなたかこれからご覧になる方、どんな号令が発せられたのか聞きとってください。

    以上

    (目次へ)

  7. 98-04-19 (K-S 380) 「PORT/STARBOARD (補足)」
  8. 寝言のような KS-377 を送出した後で、肝心な項目の見落しに気付きました。
    海事新聞の解説を読む機会がありませんので、重複するかも知れませんが、一応補足
    いたします。前報と同じ「海の英語
    (1971)」から、要点のみ抜粋します。

    [helm order 操舵命令]

    旧来の古い慣行一覧

     

    着目

    操舵命令

    慣行国



    間 接 法
    (indirect order)



    舵柄

    船首を starboard(右舷)
    方向へ転回させるために
    "Port !"(左舷へ!)と命令し、
    また、船首を
    port(左舷)
    の方向へ転回させるために
    "Starboard!"(
    右舷へ!)
    と命令する。

    イギリス、アメリカ
    合衆国、オーストリア、
    イタリー、日本、
    その他



    直 接 法



    船首

    船首を starboard(右舷)
    方向へ転回させるために
    "Starboard !"(右舷へ!)
    命令し、また、船首を
    Port
    (
    左舷)の方向へ転回させる
    ために、
    "Port !"(左舷へ)
    と命令する。




    フランス

    ・スカンディナビア水域の諸国では、船の所属する国籍にしたがい、それぞれ、操舵
     命令を異にしていた。ある国の水先案内人が他の国の所属船に乗って仕事をすると
     いうのは日常しばしば見かけるケースであって、上の操舵命令に見られる不統一を
     改め、一本の制度に直すことの重要なことは明白であった。

    ・1928年、ロンドンで開催された国際海運会議は、この問題をとりあげて結論を
     出し、これを契機として、この直後に、世界海運諸国は、いずれも間接法を廃して
     直接法に踏み切ることになった。

    ・このロンドン海運会議の結論にもとづいて制定された日本の海事法規

      操だ命令においては、「おもかじ」又は「スターボード」とは、かじを右舷に
      とれという意味に、「とりかじ」又は「ポート」とは、かじを左舷にとれという
      意味に用いるものとする。(海上衝突予防法)

    以上、自己満足でごめんなさい。

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  9. 98-04-20 K-S 381)「Re: 面舵,取り舵」
  10. 藤田>、国により異なり混同しやすかった。そこで 1928 年に国際的に統一され,
    >
    「面舵」は「右舷へ回頭、スタ−ボ−ド」、「取舵」は「左舷へ回頭、ポ−ト
    >サイド」に変更され、1931 6月から実施された。・・・

    増田> 何かないかと、佐波宣平著「海の英語 イギリス海事用語根源」という本を
    >めくってみました。期待したものは見えませんでしたが、古い古い文献の紹介が
    >ありました。

    増田>上記の Sea Grammar が脈々と受継がれて来た反面、操舵装置の変革もあって
    >混乱を来していたのではなかろうかと愚考する次第です。どなたかこれから
    >ご覧になる方、どんな号令が発せられたのか聞きとってください。

    杉浦昭典先生の「われら船乗り」海の慣習と伝説、と言う本を見るとこれらの典が
    明確に書いてあります。

    増田さんの言われるようにstarboardlarboard の発音の混同と英仏両国の慣習の
    違いにより
    1884年2月にロンドン・スク-ル・ボート対ラードネル事件と言う国際
    紛争が起こった。

    1928のロンドンでの海上衝突予防規則の改正に関する国際会議が開かれ操舵命令は
    船首を向けようとする方向を基準とするようになり用語は「ライト」「レフト」にな
    る方向だったが「ライト」「レフト」は伝統に勝てず1931から1935年の間に
    切り替えられてやっと今の形になった。

    尚日本海軍は従来からおもかじ、とりかじを使い 東郷連合艦隊司令長官は
    バルチック艦隊の直前で「とりかじ一杯」とやった話は有名で当時のイギリス流、
    日本商船流ではハードスターボードであった。
    larboardは荷物を積む側の舷の意味で左舷側が陸岸につける習慣となっていた為だ。

    櫂が舵に変わってベニスのゴンドラで見るように右舷側にあったが14世紀半ばに
    ようやく船尾中央に定位置を取った。スターボードと言うのはこの伝統らしい。
    又舵柄から舵輪になっても舵輪を回す方向と船の回頭する方向が異なりそのお陰で
    操舵命令のお国柄で混乱したようだ。

    海の世界は何時までも頑迷固陋で手早く事が決まらない伝統ですね。

    (目次へ)

  11. 98-04-20 K-S 382Re: PORT/STARBOARD(補足)
  12. 長谷川@阪大です。
    おもしろいですね、恐いですね。
    5月15ー16日にベルギーのブリュッセルで開かれる第1回世界海事用語会議
    (そんなの聞き始め)に出席します。

    といいますのも私は現在国際水槽会議の記号と用語特別グループの少ない委員の
    ひとりを仰せつかっており、その会合がこの会議にあわせて行われるからです。

    あまりなじみのない会議だから、せいぜい、ベルギーのビール巡りでもしようか
    と思っていましたが、宿題ができてしまいました。

    昔はカジが右舷にあり、カジ(steering board)のついた方という意味で
    steering board -> starboard、反対にカジがあってじゃまなので着岸は左舷でしか
    できなかったので左舷を
    Portと呼ぶようになったといういきさつも真偽はともかく、
    面舵、取り舵問題に役立つかも。

    ついでに、欧米ではいまでも左カジを+、右カジをー(時計回りを正)とするのに
    対して、日本は結果主義で、右に回るカジを+、反対をーとしていますね。

    では。

    (目次へ)

  13. 98-04-20 K-S 383)「LARBOARD

大野 道夫 です。
皆様の御蔭で次々と操舵の話が聞けて楽しいです。
小生
larboard なる言葉も知りませんでした。Starboard, Port は皆さんの
おっしゃる語源で通用していると思います。

何故昔の船が右舷にSteeringの櫂を持っていたのかが不思議です。
同じ港でも入り船で着ける岸壁と出船で着ける岸壁が出て来るし、河口港等の様に
流れのある岸壁では着岸が難しいところが出来たと思うのにコミュニケーションの
取り難い時代になぜ。

昔、ノルウェーの海事博物館で見たバイキングの最古の船の模型も確かに右舷に
持っていました。
知ったかぶりをして後輩に
Starboard の語源を教えた事があります。

Larboard Ladder board (岸壁に Ladder をかける)から来ているので
しょうか?

長谷川先生のご出張はほんとにgood timingのようですね。又新しい
何かお話が聞けるかもと期待しています。

+−も早く日本のと同じ(正当と思っています)に統一できないのでしょうかね。

では 又。

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(9)98-04-20 K-S 384392)「Port/Starboardへの思い」

黒岩です

なぜ左/右がport/starboardなのか,あまり疑問も持たずに今日に至りましたが,
皆様のport/starboardについての語源,経緯の話,興味深く読ませて頂いています。

,左利なのですがその性ではないと思いますが,左右音痴で,車に乗っていても
次の交差点を
"右折して"と言われてもちょっと考えないと判断できないのです。
P&Sは左右(さゆう)だからport-sideが左側で,starboard-sideが右側で,port
からはなんとなくportwineをイメージしポートワインは赤いから左側の舷灯は
(紅灯)であり.starboard-sidestarからは,星の光からなんとなく青-緑色を
イメージして
,右側の舷灯は緑(緑灯)と言うように覚えてきました。

私のことですが ,取舵,面舵と言われて,どっちが左、右 ?と迷っているような造船屋
も居たものでした。

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(10)98-04-21 K-S 385 LARBOARD/PORT/STARBOARD

悪乗りして KS-383/384 に応答を。
(やはり、老後の楽しみにとっておいた「海の英語」より)
[larboard
左舷]
larboard
の語源として2説がある。

(1) 「舵手の背後
(back) にあたる舷 (board) 」という意味の baecbord が訛って
larboard となったという説。
(baecbord は古代英語で ae は一文字です)
要するに、今日の
babordo(), babor(西), baord(, a の上に ^), bakbood
(
), Backbord() などが
larboard の語源をそのまま遺しつたへていると
見るのである。

(2) Lade (荷物の積みつけをする) + bord () の関係から larboard という言葉が
  生まれたという説。
もと帆船は右舷から突き出される大きな艫で漕がれた。だから、アングロ・
サクソン語では、こうした右舷が
steorbord (steer side, 漕ぐ舷) と呼ばれた。
他方、波止場に近づこうとするには船は舵を外側に回さなくてはならなかった
ので、どうしても、船の左舷が荷物の積み込みに用いられることになり、ため
に、左舷は
ladebord (loading side, 荷物を積みこむ舷) と呼ばれた。ただし、
これらの用語はごくわずかに形をかえて、
starboard, larboard が標準語として
この数世紀間用いられている。

[port] の項より port に関連のある用語の一つ "port wine"
船灯制度の説明
: 省略
 日本にこの船灯制度が布かれたのは明治5年
(1872)太政官布告第209号船灯
 規則によるのであって、その第3条に「白色艢灯、右舷緑灯、左舷紅灯」を定め
たうえで、次のように親切な注意を与えた。

大船にともすともしび上は白、みぎは美どりに左くれない。
此ノ歌ヲ暗記シ置クベシ但シミギノ美ノ字ハミドリノミノ字ナレバ覚エヤスシ
又英
(イギリス ) ・亜( アメリカ) 等ニテハ「ポート、ワイン」( ポート産ノ赤酒)
赤シト云フコトヲ記憶スヘシト云ヘリ是レ左舷
(ポート )ト「ポート、ワイン」
ノ語ヨク対シテ共ニ赤キヲ以テナリ

たしかに、ご親切ですね。 以上

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(11)98-04-22 PORT/TORIKAJI

大野 道夫 です。
黒岩さんのメールで思い出しました。

大学時代に原田先生だったか、赤崎先生だったかがやっぱり原田先生でしたかね。
左舷がPORT。覚えるのにはポートワインを思い出したら良い。
左党(酒飲み)で思い出す。

左舷回頭は「取り舵」。これは「左」褄を「取る」で覚えたら良い。
と教えて下さった事を。

大事な事は少しも覚えなくて、こんな事だけ覚えています。

では 又。

 

PS:皆様のメールでのやり取りの配列だけになりましたが,興味深く 読みなおしてみる
ことが出来ました。この後は三宮さんの英国旅行の話題に続くのですが…(黒岩
記)

(
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