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会長メッセージ

日本船舶海洋工学会 会長 藤久保 昌彦
日本船舶海洋工学会 会長
藤久保 昌彦

このたび、会長を拝命しました藤久保です。会長就任にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。

はじめに、新型コロナウイルスが依然猛威を振るっています。どうか皆さん、引き続き感染対策に留意され、このコロナ禍を無事に乗り切ってください。またこの未曾有の困難の中、学会運営にご尽力いただきました三島前会長はじめ理事・監事の皆様、本部・支部の関係者の皆様に厚くお礼申し上げます。

本学会は、創立以来120有余年にわたり、船舶海洋工学に係わる技術者、研究者のコミュニティとして、学術・技術の発展に貢献してきました。その使命は今後も変わることはありません。学会は、多様な知識、経験、可能性を持つ人が会し、新たな知見、ビジョンを見出し、そして人を見出す場です。そういう観点から今を見ますと、人の母集団が固定化している、産業界の厳しい状況もあって産学の距離感が広がっているなど、全体に人・勢いともに、ややシュリンク感があります。先日、関西支部の講演会で、ヨットや小型クルーザなどの設計者、正にNaval Architectが,本会にあまり入会されていないという話を聞きました。造船現場のデジタル化の鍵を握る若手技術者の方々も、まだ入会は少ないようです。学会は、こうした産の方々にも、より魅力を感じていただける内容と役割を持たねばならない。それがまた、学につながる。こうした認識をもちながら今後に臨む所存です。

さて、わが国造船業は、中韓の台頭による慢性的な供給能力の過剰と船価の低迷により、長きにわたり厳しい状況下におかれています。コロナ禍による荷動き量の減少は、これにさらに拍車をかけています。このような、歴史的難局を乗り切り、海事産業を維持・発展させるためには、産官学による、これまで以上に強力な連携と、イノベーションの創出が必要です。

今求められる技術開発のキーワードは、デジタルトランスフォーメーション(DX)、脱炭素、自律化、システムインテグレーション、等々です。これらはいずれも、従来の伝統的な船舶工学の縦割りでは実現不可能であり、機械、電気、制御、情報、化学など多様な分野を含む横断的な研究開発が必須です。一方、我々には海上輸送、海洋開発というフィールドとその基盤技術があります。他分野の研究者で、海事・海洋のフィールドにおける社会実装に関心を持つ方は、多数おられるはずです。学会は、そうした方々との化学反応の場を作ることが可能です。

大変ありがたいことに、前理事会の下で、コロナ後の海事社会に向けた新たなビジョンを発信するべく、「アフターコロナ禍特別検討委員会」が設置されました。この委員会では、DXと連動した新たな物流・造船のあり方を始めとして、幅広い課題が産学で議論され、年内にも提言が出される予定です。さらに、学会と日本造船工業会との定期的な意見交換会もスタートしました。新理事会では、これらの検討を鋭意進めるとともに、提言の実行に努めてまいります。

以上の内容を含めて、今後の方針として、ここでは、以下の4点を挙げたいと思います。

(1) 知の連携の強化
先に述べたように、横断的・複合的な研究開発課題が増えています。学会には、「性能・運動」、「構造強度・材料溶接」、「工作」、「設計・艤装」、「海洋工学・海洋環境」、「情報技術」の6つの研究分野があります。この6分野は、旧3学会の統合時から変わっておらず、活動も分野の縦割りで推移しているように思います。もっと各分野が機動的に連携して、問題解決力を高めること、検討の幅を広げることが必要に思います。ただし、ここで大事なことは、学会全体として何を目指すのかの目標を明確にし、それを共有することです。そのためのビジョンの構築と学会内外への広報が、同時に重要であると考えています。

(2) 絶えざる本質の追求
デジタル化やシステムインテグレーションが叫ばれますが、それだけで技術の差別化は不可能です。流体、構造、材料など基礎となる学問の絶えざる深化、現象の本質の追究があってこその、デジタルでありシステムです。私は構造強度を専門としますが、巨大な構造物も破損はミクロからです。しかし、その材料挙動を疎かにして、いたずらに大規模な計算をしても現象解明になりません。他の研究分野も同じと思います。時代の技術を先導するとともに、基盤となる学術と、現象の本質を大事にする学会でありたいと思います。

(3) 若手ネットワークの充実
近年、造船学科の学生の進路が多様化する中、造船以外の分野から造船界へ入ってくる方が増えています。新鮮な感覚と価値観をお持ちと思います。大学も、特に若手は、造船以外のシーズを持った方、新分野にチャレンジしている方が増えています。そういう若手会員同士のネットワーク作りは、新たな活動の基盤、未来への基盤となります。先に述べた会員の多様化にもつながると思います。オンラインも活用しながら、若手会員のネットワークの充実を検討します。

(4) 時代をつなぐ学会
「時代をつなぐ」とは、船舶海洋の歴史・文化を未来につなぐことです。本会の「ふね遺産」は、船の歴史に新たな光を当てました。さらに期待することは、三島前会長も強調されていた、今に至る技術の体系化です。折しも、論文審査委員会に「歴史」の審査部門ができました。技術・文化のレビューを含めて、是非とも時代をつないでいただきたく、期待しております。

他にも多々課題はありますが、何を成すにも時間とパワーが必要です。一方、我々のキャパシティは有限です。このことも念頭に置きながら、持続性のある体制造りと会員サービスの充実に努めてまいります。ご支援、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

以上、私の挨拶とさせていただきます。

日本船舶海洋工学会 会長 藤久保 昌彦
(大阪大学)

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