日本船舶海洋工学会は、創立120周年を迎えるにあたり、永く日本の産業や文化を支え、歴史的技術的に価値のある船舟類とそれに関連する設備や技術文書などを、ふね遺産として認定し広く国民に周知することとしました。一般から公募された24件の中から、ふね遺産認定実行委員会による選考を経て9件がふね遺産審査委員会に推薦され、明治記念館(東京)において平成29年5月22日開催された審査委員会により、下記の9件を第1回のふね遺産として認定しました。また第1回認定式は平成29年7月18日(火)に明治記念館(東京)にて執り行われました。
本認定事業は学会として学術的観点から行うもので、法的拘束あるいは保存維持経費などの支援を直接行うものではありません。
第1回ふね遺産認定結果一覧(順不同)
認定案件 | 所有者 |
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〈現存船〉 日本丸 ─機関搭載浮揚状態で現存する最古の日本建造練習帆船─ |
横浜市 (帆船日本丸記念財団管理) |
〈現存船〉 ガリンコ号1 ─スクリュープロペラの原型である螺旋スクリュー推進流氷海域遊覧船─ |
紋別市 |
〈復元船〉 復元菱垣廻船「浪華丸」 ─江戸時代の海運で活躍した菱垣廻船の唯一忠実な実物大復元船─ |
大阪市 |
〈船舶に搭載された機器、設備〉 金華山丸のブリッジ設置機関制御コンソール ─機関自動化の先駆け金華山丸のブリッジ設置制御コンソール─ |
(株)商船三井 (技術部技術研究所管理) |
〈船舶の建造設備〉 旧浦賀船渠(株)のドック ─明治期(1899年)のユニークな煉瓦積ドック─ |
住友重機械工業(株) |
〈船舶の建造設備〉 下関旧第四港湾建設局船渠 ─我が国残存の最古級(1912年)コンクリート製ドック─ |
下関市 |
〈船舶の研究関連設備、機器〉 東京大学船型試験水槽 ─我が国最古(1937年竣工)の大学船型試験水槽─ |
東京大学 |
〈船舶の研究関連設備、機器〉 船舶搭載型航海性能計測コンテナ ─世界に先駆けたオール・イン・ワン型実船計測システム─ |
横浜国立大学(海洋空間の システムデザイン教室管理) |
〈造船関連資料〉 平賀譲文書 ─明治・大正・昭和に亘る40000点に及ぶ造船技術資料─ |
東京大学 |
以下、各認定案件説明と共に、見学情報(H29年8月18日時点)を記載していますので、ご活用ください。
昭和5(1930)年に進水した、現存する日本で建造された航行可能な最古の帆船です。戦前・戦中・戦後を通し練習船として多くの船員を育成するとともに、現在も海洋教育の場とし活用されています。
また、日本で開発製造された初期の大型舶用ディーゼル機関を搭載し、舶用ディーゼル機関の国産化への先駈けとなりました。建造時の鋼材や構造・艤装様式がよく保存されており、設計図書、航海・機関・無線日誌等の資料も多数現存しています。
見学 | 見学可能 休館日:月曜日及び冬季集中整備期間、詳細はこちら |
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所在地 | 日本丸メモリアルパーク旧横浜船渠株式会社1号ドック、〒220-0012 横浜市西区みなとみらい2-1-1 |
アクセス | JR、私鉄、地下鉄より徒歩、詳細はこちら |
見学申請 | 不要 |
その他 | 入館料:日本丸のみ400円、博物館と共通600円、公開時間:10:00~17:00(入館16:30) 問合せ先:帆船日本丸・横浜みなと博物館 TEL 045-221-0280 |
オホーツク・ガリンコタワー(株)によって、昭和62(1987)年から平成8(1996)年まで運航されたガリンコ号1(全長24.9m、全幅7.6m)は、三井造船(株)が開発した実験船を改造したもので、一般的な砕氷船と異なり、アルキメディアンスクリュー(円筒フロートの外周に螺旋状ブレードを巻きつけたもの)が回転し、氷板に食い込むことによって得られる反力により、砕氷して進む流氷海域遊覧船です。従来型砕氷船に比べ、高度な船体強度を要しないこと、砕氷に必要な馬力が小さくてすむこと、浅海域でも適用が可能なことが特徴です。この推進方式での遊覧船は世界的にも希少で、流氷で閉ざされた冬期間の地域経済の活性化と流氷海域に対する国民の意識向上に寄与しました。本船は陸上保管され、現在はガリンコ号2が運航されています。
見学 | 外観は随時見学可能 |
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所在地 | 海洋公園、〒094-0031 紋別市海洋公園1番地 |
アクセス | オホーツク紋別空港からバス、旭川からバス、詳細はこちら |
見学申請 | 不要 |
その他 | 問合せ先:オホーツク・ガリンコタワー株式会社 TEL 0158-24-8000/FAX 0158-24-4040 メールアドレス:gari150t@o-tower.co.jp |
江戸期の経済を支えた弁才船(いわゆる千石船)の実物は一隻も現存しない中で、国立国会図書館所蔵の「千石積菱垣廻船二拾分一図」をもとに、形状、構造、材料から工法に至るまで可能な限り忠実に復元された、江戸期の和船の構造や建造技術を後世に伝える貴重な存在です。
船大工等15 名が建造にあたりましたが、現在では同等の技術を有したマンパワーを集めることは困難で、同規模の復元は今後極めて難しいと考えられます。
また、海上運転を含め、現在の造船工学の観点から諸研究が行われ、弁才船の諸性能が明らかにされ、関係論文も数多く公表されています。
見学 | 現在確認中のため暫くお待ちください。 |
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所在地 | |
アクセス | |
見学申請 | |
その他 |
船橋から主機を直接操縦するブリッジコントロール方式と、機関部の監視や制御を機関室下段のコントロールルームで集中的に行う集中監視制御方式を採用した世界最初の自動化船「金華山丸」は当時海運業が直面した乗組員不足と採算性追求の流れの中で、昭和36(1961)年に三井造船(株)が当時の三井船舶(株)向けに竣工しました。金華山丸に刺激されて自動化船の建造意欲が盛り上がり、その後夜間機関室無人化は世界の趨勢となりました。金華山丸は低船価・短納期を武器に、戦後わずか10年で世界のトップの座に躍り出た日本の造船業が、技術力でも遂に世界の頂点に立ったことを示した金字塔の一つです。
見学 | (株)商船三井にて公開に向け準備中です、(株)商船三井ホームページに9月頃アップされる予定です |
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所在地 | |
アクセス | |
見学申請 | |
その他 |
浦賀船渠(株)は明治30(1897)年に榎本武揚らの提唱により設立され、明治32(1999)年にドライドックが建造されました(長さ180m、幅20m、深さ11m)。平成15(2003)年に浦賀工場は閉鎖されましたが本ドックは現存しています。側壁はレンガ積みで、ドライドックとしてその形式を残しているのは我が国では本ドックのみであり、歴史的に貴重な遺産です。
見学 | 年に何回か開催されるイベント時に見学可能 |
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所在地 | 住友重機械工業株式会社浦賀工場内、〒239-0822 神奈川県横須賀市浦賀4-7 |
アクセス | 京浜急行線浦賀駅下車徒歩5分 |
見学申請 | イベント情報詳細はこちら |
その他 |
大正期までのドライドックは石造が主体でしたが、本ドックは大正3(1914)年に竣工したコンクリート造の先駆的構造物で、我が国に現存する最古級の無筋コンクリート製ドライドック(全長54.3m、幅20.1m、深さ6.2m)です。
重要港湾の一つである関門港およびその周辺の開発・維持工事に多大な役割を果たした施設です。
現在、本ドックは埋め立てられていますが、その外形形状が残るよう整地されています。
見学 | 随時見学可能 |
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所在地 | 〒750-0003 山口県下関市阿弥陀寺町6 |
アクセス | JR山陽本線下関駅、市内バス唐戸市場前バス停下車、徒歩3分 |
見学申請 | 不要 |
その他 |
本水槽は昭和12(1937)年に建設された、国内の大学が所有する現存船型試験水槽としては最も古い水槽であり、日本および世界の造船技術の発展に先導的な役割を担ってきました。世界中の船舶に影響を与えた船首形状の開発をはじめ数々の先進的な研究成果を生み出しており、船舶工学における流体力学の確立・発展に加えて、船舶の燃費・速力向上に役割を果たす様々な技術開発に多大な貢献をしてきました。現在も教育、研究設備として稼働中です。
見学 | 東京大学開催イベント時に見学可能 |
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所在地 | 東京大学本郷キャンパス、〒113-8654 文京区本郷7-3-1 |
アクセス | 東京メトロ、都営バスより徒歩、詳細はこちら |
見学申請 | 東京大学イベント情報で確認ください、HPはこちら |
その他 | 2017年11月開催の船型試験水槽80周年記念式典で公開される予定です |
昭和46(1971) 年に実船計測用として発案・製作されました。20フィートコンテナ内部を改装し、船体運動、加速度、船首変動水圧、衝撃水圧、軸トルク用の計測・記録機器を搭載し、ブリッジからの遠隔操作を可能としました。また、投棄式波高計による波高計測やレーダーによる波向計測も行われました。実船試験は、実際の荷役作業中に短期間で準備せねばならず、また計測場所の確保も困難でしたが、コンテナ化によりそれらの問題を解決した画期的な設備となりました。コンテナ船計測で7回使用され、またプラントバージの曳航輸送時の計測にも用いられました。
見学 | 外観を見学可能(海洋空間のシステムデザイン教室管理) 見学申請が必要 |
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所在地 | 横浜国立大学キャンパス、〒240-8501 神奈川県横浜市保土ケ谷区常盤台79-1 |
アクセス | JR、私鉄、路線バスより徒歩、詳細はこちら |
見学申請 | 下記アドレスにメールして下さい 横浜国立大学 平川嘉昭准教授 (E-mail:hirakawa-yoshiaki-jd@ynu.ac.jp) |
その他 | 横浜国立大学ミュージアムでパネル紹介中、詳細はこちら |
第13代東京帝国大学総長・海軍技術中将平賀譲博士が残された、明治23(1890)年頃から昭和18(1943)年頃までの資料で、海軍軍艦の図面、技術報告書、写真、東京帝国大学の経営に関する書類、個人の日記書簡など40000点に及びます。
平賀譲博士は海軍造船官として、日露戦争後の軍艦国産化の指導的役割を果たした。また同時に東大教授として後進の育成にあたり、のちに東大総長として戦争期の技術政策、大学教育システム整備にあたりました。軍艦の材料、溶接技術、生産技術などの旧海軍技術資料、東大での講義資料、粛学に関する日記など、技術史、教育史、海軍史上重要な資料です。
なお、本資料は平賀譲デジタルアーカイブとしてインターネット上で公開されています。
見学 | 見学不可 インターネットにて閲覧可能、詳細はこちら |
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所在地 | 東京大学柏図書館 |
アクセス | |
見学申請 | |
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