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第6回 ふね遺産認定のお知らせ

日本船舶海洋工学会 ふね遺産認定実行委員会

歴史的で学術的・技術的に価値のある船舟類およびその関連設備を「ふね遺産」(Ship Heritage)として認定し、社会に周知し、文化的遺産として次世代に伝えるため、日本海洋船舶工学会が発足させたふね遺産認定事業も今年で第6回を迎えました。

令和4年5月24日に開催されたふね遺産審査委員会の審議に基づき、第6回ふね遺産として下記3件を決定し、令和4年9月27日に認定式を行うこととなりました。

審査委員会委員(順不同、敬称略)は次の通りです。

日本船舶海洋工学会会長
藤久保 昌彦(委員長)
日本航海学会会長
庄司 るり
日本マリンエンジニアリング学会会長
木下 哲也
日本海事史学会会長
安達 裕之
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 准教授
福永 真弓
日本船舶海洋工学会 理事
脇山 典広
ふね遺産認定実行委員会 委員長
小嶋 良一
 
第6回認定案件 所有者等
「大阪市の渡船」
水都大阪の交通を支えてきた渡船システム
大阪市建設局及び大阪港湾局に認定書及び認定プレート
全軽合金製15m型巡視艇「あらかぜ」
わが国で初めて軽合金を全面採用した高速船
公益財団法人 琴平海洋会館に認定書及び認定プレート
「箱館丸」
日本人が建造したスクーナー型西洋帆船の先駆け
非現存船(函館の歴史的風土を守る会及び弘前市に認定書)

〈現存船〉

(1) 大阪市の渡船
ふね遺産第40号(現存船第15号):水都大阪の交通を支えてきた渡船システム

所有者
大阪市建設局及び大阪港湾局
保管場所
大阪市大正区他
大阪市の渡船
大阪市の渡船

水都大阪には多数の河川があり、人々の通行のための渡船は江戸時代から始まった、生活に欠かせない交通手段の一つで、動く橋として今なお親しまれている。

8箇所の渡船場で15隻の船が運航され、橋より通行に便利なこれらの渡船は年間約150万の人々によって利用されており、認定道路の一部ともなっている。廃止された渡船の顕彰碑などもあり、その歴史を後世に伝えている。

現在、天保山、千歳、甚兵衛、船町、落合上、落合下、千本松渡船場は大阪市建設局、木津川渡船場は大阪港湾局によってそれぞれ管理されている。

ふね遺産認定基準の中で、「生活や利便性の向上に顕著に貢献したもの」として認定された。

明治24(1891)年
大阪府が「渡船営業規則」を制定して管理
明治40(1907)年
29渡船場を市営事業として大阪市が管理
昭和10(1935)年頃
渡船場31か所、保有船舶69隻、年間利用歩行者5752万人
令和2(2020)年
渡船場8か所となる

(2) 全軽合金製15m型巡視艇「あらかぜ」
ふね遺産第41号(現存船第16号):わが国で初めて軽合金を全面採用した高速船

所有者
公益財団法人 琴平海洋会館
保管場所
同上
全軽合金製15m型巡視艇「あらかぜ」
全軽合金製15m型巡視艇「あらかぜ」

「あらかぜ」は昭和29(1954)年、三菱下関造船所にて建造された、我が国で初めて、耐食性と溶接性に優れた軽合金が全面的に使用され、大幅な高速化・軽量化が達成された巡視艇である。

主要目は以下のとおりである。

全長15.00 m
最大幅4.20 m
深さ2.00 m
排水量15.88 t
吃水0.596 m
主機関ディーゼル2基,440 PS
最高速力20.62 kt
乗員6 名

建造中、就航後に実施された諸試験研究の成果がすべて公表され、多くの造船所で軽合金船や軽合金製船舶上部構造物の製造が可能になった。

その後、艦艇、巡視船艇、官公庁船、旅客船、漁船など3,000隻を超える全軽合金船が建造され、船舶のみならず陸上設備、鉄道、橋梁などの分野にも耐食・溶接軽合金の採用・使用が拡大した。

ふね遺産認定基準の中で、「独創的または新規の技術を与えたもの」として認定された。

〈非現存船〉

(1) 箱館丸
ふね遺産第42号(非現存船第10号):日本人が建造したスクーナー型西洋帆船の先駆け

所有者
非現存船
保管場所
──
箱館丸
箱館丸

箱館丸は安政4(1857)年に箱館港内築島造船場で日本人船大工によって完成された箱館奉行所の船である。

建造者、続豊治はヘダ号に始まる君沢型の情報に接するとともに、寄港する外国船を独自に調査・研究した結果に基づき、ヘダ号より一回り大きく(バウスプリットを除く全長29.6m、幅7.06m、深さ3.75m)、帆も8枚展帆できるスクーナー箱館丸を設計した。

スクーナーは操帆が容易で乗組員が少なくて済み、風上に対し切り上りの性能が良好という特徴を有している。

安政5(1858)年には、北海道一周、翌年には日本一周航海をおこなった。その後、続豊治が建造に関わった類型船は合計15隻に及び本船はその嚆矢となった。

なお、弘前市立弘前図書館には津軽家古文書の中に「箱館丸」に関する資料が数多く残されている。

ふね遺産認定基準の中で、「技術の進歩・改良の大きな一段階となったもの」及び「新たな経済・産業分野の創造に寄与したもの」として認定された。

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