広島大学大学院工学研究科輸送・環境システム専攻 田中 進
大水深海域で生産された天然ガスやメタンハイドレートをいかにして安く安全に陸へ輸送するかという課題があります。その一つの解決策として、産出したガスを洋上でハイドレートに戻して輸送する方法 (ハイドレート法) が提案されています。
ハイドレート法の実現のためにはハイドレートの製造・貯蔵・輸送・再ガス化といった輸送チェーン全体のコスト低減を狙った技術開発が求められます。筆者は、ハイドレート関連の機器開発や設計を進める上で、また、複雑なハイドレートの生成・分解現象を理解する上で、輸送チェーン全体を対象とした、ハイドレート関連機器の理論的かつ精度良い性能予測手法の構築が重要であると考えています。
研究例として、産出ガスをハイドレートに戻す時の生成槽内ハイドレート結晶成長シミュレーション (図1)、ハイドレートを貯蔵タンクに充填・貯蔵する時の貯槽内ハイドレートの充填・伝熱シミュレーション (図2)、貯蔵ハイドレートを再びガスに戻す時のガス化槽内ハイドレートの伝熱シミュレーション結果 (図3) を示します。これらのシミュレーション結果は実験室スケールの装置やベンチスケールの装置を用いた実験データとの比較を通して検証を積み重ねています。
環境性に優れ水素社会への橋渡し役として期待されている天然ガスの新たな輸送オプションの創出として、また、非在来型の資源として期待されているメタンハイドレートの流通実現を願って、今後もメタンハイドレート輸送研究に取り組んでゆく所存です。
図1 生成槽内ハイドレート結晶成長シミュレーション
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図2 貯槽内ハイドレート充填・伝熱シミュレーション
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図3 ガス化槽内ハイドレート伝熱シミュレーション
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田中 進
広島大学大学院工学研究科輸送・環境システム専攻
船舶海洋工学