広島大学大学院工学研究科輸送・環境システム専攻 新宅 英司
広島大学は中国・四国地方の国立総合大学で唯一、海洋調査を行う中型の練習船を所有しています。本記事では呉港を拠点に活動する生物生産学部附属練習船「豊潮丸」を紹介します。
豊潮丸 (図1) は四代目で2006年に竣工しました。代々豊潮丸は広島大学で水産に関わる教育研究に使用されています。2012年には文部科学省から「教育関係共同利用拠点」に指定され、広島大学だけでなく中国・四国地方の大学での教育実習や、海洋調査、海洋生物に関する研究等に活用されています。また、社会貢献活動で小中学生を対象にした海洋調査セミナー等を開催しています。
図2に示すように豊潮丸は呉港にある練習船基地を拠点に活動し、主要な実習・調査海域は瀬戸内海ですが、調査で九州北部、薩南海域、沖縄まで航行することもあるそうです。2017年度は合わせて171日の航海が予定されています。
豊潮丸は国立大学の練習船では初めての電気推進船です。今回、豊潮丸の中口船長にお願いして研究室の学生共々船内を見学させて頂きました (図3)。
豊潮丸は計画の段階から海洋調査を主目的として、静粛性が高く、低速での速度調整が可能であり、さらに船内配置の自由度がある電気推進を採用することにしたそうです。本船の詳細を下記主要目に示します。動力源である3台のディーゼル発電エンジンが設置されている機関室は、防音されて静粛であるため、荒天時は船体をたたく波の音の方がうるさいくらいだそうです。
また、電気推進システムの配置の自由度を活用して、限られた船内空間に効率よく各種研究設備、居住設備を配置しており、男女別のトイレや浴室もあります。さらに図4に示すように多様な実習・調査機器が設置されており、これらのスペース確保と研究作業を容易にするためにファンネルは左舷側にあります。
図5のクラゲ除去装置も本船の特長の一つです。近年、瀬戸内海を含めた日本近海はクラゲの被害が報告されていますが、本船は冷却海水ポンプにクラゲ除去装置を設置しているのでトラブルフリーだそうです。
本記事は著者らの興味が強く反映しているため、豊潮丸のハードウェア中心の内容となってしまいました。この他にも見学させて頂いた船内各所に興味深いものがあったのですが、すべて紹介できないのが残念です。なお、下記ホームページをご覧いただければ、研究活動等の最新情報、本船についての詳細な情報をご覧いただけます。
最後に、航海の合間のお忙しいなか、見学に対応頂いた豊潮丸の皆様に感謝いたします。
図4 船尾の調査関連機器
[拡大画像]
図5 クラゲ除去装置
[拡大画像]
図6 豊潮丸の皆様、お世話になりました
[拡大画像]
新宅 英司
広島大学大学院工学研究科輸送・環境システム専攻
船舶海洋工学