佐世保重工業(株)新造船事業部設計部船体設計課 大崩 光平
5MINERVA ELEFTHERIA
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本稿では佐世保重工業(株)佐世保造船所にて本年2月に竣工した115,000載荷重量トン型アフラマックスタンカー「MINERVA ELEFTHERIA」を紹介します。本船のベース船は当社のグループ企業である(株)名村造船所で開発されました。それまでの同社建造のアフラマックスタンカーと比較して船幅を2m拡げることで全幅を44mとし、浅喫水ながら約115,000載荷重量トンを確保しています。
同社が開発した船尾付加物の省エネフィン「NCF (Namura flow Control Fin)」および舵付きフィン「Rudder Fin」を装備し、推進性能の向上を図っています。加えて船底塗料として低摩擦型防汚塗料を、主機関としてウルトラロングストロークの省エネタイプの電子制御式エンジンを採用することで燃料消費量の低減を図っています。また2016年に開通した新パナマ運河を通航可能とするため最大船幅、喫水、係船金物等の要件を満足しており、汎用性に長けた設計となっています。
環境にも配慮した設計となっており、Fuel oilおよびMarine gas oil兼用のStorage tankを設置して使用燃料の選択の自由度を高め、SOx排出規制海域における低硫黄燃料の使用にも柔軟に対応可能です。さらにバラスト水管理条約に基づき電気分解式のバラスト水処理装置を装備し、海域間での水生生物の移動を防ぐことで生態系の保護に配慮しています。
カーゴオイルタンクおよび燃料タンクには二重化構造を採用しており、不慮の事故による貨物油、燃料油の流出リスクを最小限に抑えています。航行中の乗組員の安全についても配慮しており、海賊の攻撃から身を守るために舵取機室を籠城用のCITADELとそれに必要な設備を設けています。
その他の特徴として、水中検査に必要なマーキングを船体に施すことで、船級符号 "UWILD" を取得しています。またバラストタンクおよびカーゴオイルタンクには腐食対策の国際規則であるPSPCを適用しており、防食性能の向上を図っています。
本船の主要目は以下の通りです。
大崩 光平
佐世保重工業(株)
新造船事業部設計部船体設計課