(株)新来島どっく技術設計本部基本設計部開発・知財課 森田 賢史
2019年3月13日、当社グループの新高知重工(株)にて3,999 DWT溶融硫黄運搬船を引渡しました。
溶融硫黄は、IBC CODEに規定された危険物であり、130℃~140℃に加熱溶融された状態で運送されますが、155℃を超えると粘度が急激に高くなり、160℃を超えると流動性をほとんど失うため、適正な温度管理が重要となります。本船のカーゴタンクには熱媒油によるヒーティング装置を設けています。
また、溶融硫黄生成の過程で発生するガスには硫化水素が大量に含まれており、このガスが水分と反応して腐食性の高い希硫酸になるという特徴も持っています。運搬中はタンク内気相部の硫化水素ガス濃度を下げるために強制通風させる必要があります。溶融硫黄運搬船において通気機能は非常に重要であり、硫黄結晶等によって通気機能が失われると、異常圧力によりカーゴタンクの損傷を引起す恐れもあります。
カーゴタンクは重力式独立型タンクであり、温度管理の一助としてタンク周囲は全面に防熱を施しています。先述の通り、溶融硫黄は温度管理が重要であるため、ベント管や荷役管・測深管・バルブ等にも強制加熱を行い防熱も施しています。
カーゴタンクの下部は、樹脂製のボードを介し、台で支持しています。これまでの当社建造の独立タンク搭載船において、タンク下部に断熱性の高い石膏ボードを採用していましたが、航海中の衝撃によりこれらの石膏ボードが割れることが一つの問題として挙がっていました。本船では、樹脂製ボードを採用することにより、その問題解決を図るという新たな試みも取り入れています。
森田 賢史
(株)新来島どっく技術設計本部基本設計部開発・知財課