ジャパン マリンユナイテッド(株)設計本部船舶海洋設計部船体計画グループ 進藤 翔平
2019年10月3日に当社呉事業所にて竣工・引き渡されたマラッカマックス型VLCC"丹沢"について紹介します。
本船は当社にて豊富な建造実績を誇るマラッカマックス型VLCCの次世代船として、2013年1月のJMU発足後初めて開発された "JMUマラッカ型VLCC" の竣工8番船となります。本船の主な特徴を紹介します。
マラッカマックス型VLCCは一般的に中東-日本間の原油輸送に投入される船型で、この航路上の難所であるマラッカ海峡を通過出来る喫水 (d=20.5m) にて最大量の原油を輸送できるよう最適設計されています。さらに、この地理的条件に加えて、主要目は日本の主要な港湾規制 (Loa/Gross Tonnage/Deadweight等) を満足するよう、汎用性を考えて設計されています。
このようにマラッカマックス型VLCCは厳しい設計条件の中で開発競争が繰り広げられている船種であり、当社の前身であるアイ・エイチ・アイ マリンユナイテッドおよびユニバーサル造船の時代を含め、本船は永年に亘って蓄積したVLCC開発のノウハウおよび最新鋭の技術を結集した次世代省エネマラッカマックス型VLCCとして、以下の様々な差別化技術が投入されています。
最新のCFD技術および船型試験水槽での模型試験による船型最適化が行われており、加えて、当社独自の省エネ装置であるSuper Stream Duct®やSURF-BULB®の搭載、ALV-Fin®の最適配置により、従来のマラッカマックス型VLCCに比べ大幅な燃費削減を達成しています。さらに、最新式電子制御エンジン、低摩擦塗料、当社設計の大直径プロペラの採用も本船の燃費性能向上に貢献しており、温室効果ガス排出規制であるエネルギー効率設計指数 (EEDI) は2020年以降の契約船に適用されるPhase 2レベルを先取りして満足しています。
LEADGE-BOW®と呼ばれる波浪中抵抗低減船首および新騒音規則にも配慮した低風圧居住区の採用により、実海域での性能も向上させています。
本船は主機と発電機の排気ガス出口部にSOxスクラバーを搭載しており、2020年1月から一部指定海域を除いた一般海域へ適用されるSOx (硫黄酸化物) 排出規制に適合しています。また、カーゴタンクの底板に耐食鋼を採用することにより該当箇所の塗料が不要となり、さらに空調や冷凍機に環境規制に対応した冷媒を採用するなど、環境により配慮しています。
ブリッジには日本郵船株式会社殿仕様の着座式の情報統合型船橋を採用しており、デジタル機器の統合や、ブリッジ内レイアウトの最適化、全方向への視界確保により、運航時の効率化と安全性の向上が期待できます。
進藤 翔平
ジャパン マリンユナイテッド(株)設計本部船舶海洋設計部船体計画グループ
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