九州大学大学院工学府海洋システム工学専攻修士課程2年 細井 友花里
九州大学伊都キャンパスのウエストゾーンの西講義棟とウエスト4号館の傍には「造船学教室の大錨」が設置されています。この大錨は船舶海洋システム工学教室の学生には勿論のこと、学内の他の専攻の学生にも広く知られており、存在感のあるモニュメントになっています。今回、この場をお借りしてこの大錨について紹介致します。
この大錨の製造時期は昭和17 (1942) 年と記されています。すなわち80年近く前の第二次世界大戦中に造られています。この大錨は昭和61 (1986) 年11月に当時の石川島播磨重工業株式会社 (現在のジャパン マリンユナイテッド株式会社) 呉第一工場から九州大学に寄贈され、福岡造船株式会社のご厚意によって呉から福岡まで運搬していただき、元々は九州大学箱崎キャンパスの工学部五号館 (船舶海洋システム工学教室) 横に据付けられました。その後、九州大学の伊都キャンパスへの移転に伴い、平成20 (2008) 年4月に現在の場所へ移設されました。
この大錨は水線200m級巡洋艦用の船尾に搭載する中錨の予備錨として製造されたと伝えられています。重量6ton,高さ5.1m,最大幅3.13mのストックアンカーです。ストックと呼ばれる錨の爪と直交する棒が取り付けられている点がこの錨の特徴です。ストックアンカーは様々な錨の種類の中でも最も古いタイプの錨となっており、帆船時代から大型船に使用されてきました。しかし、揚錨や投錨に手間取るという欠点があるため次第に使用されなくなってきました。そのため、近年はストックの無いストックレスアンカーが主流となっています。この造船学教室の大錨がストックアンカーであることからも、この大錨の歴史を感じられるでしょう。
今や九州大学工学部船舶海洋システム工学教室のシンボルともいえるこの大錨は日本の造船の歴史の深さを物語っています。そして今後も日本の造船業界の発展を見守ってくれると思います。もし九州大学伊都キャンパスに足を運ぶ機会がありましたら、是非この「造船学教室の大錨」を実際に近くで見られてはいかがでしょうか。
細井 友花里
九州大学大学院工学府海洋システム工学専攻修士課程2年
船舶海洋工学