佐世保重工業(株)艦艇・修繕船営業部艦艇営業課 樋渡 大顕
当社は、一般商船の建造を行う新造船事業、舶用クランク軸等の製造を行う機械事業、一般商船・官公庁船・特殊船の修理を行う艦艇・修繕船事業の主に3つの事業を営んでいますが、本稿では艦艇・修繕船事業で施工した地球深部探査船「ちきゅう」定期検査工事について紹介します。
はじめに、地球深部探査船「ちきゅう」の概要ですが、本船は人類史上初めてとなる地球内部のマントルや巨大地震発生域への大深度掘削を目標とし、世界初のライザー掘削を可能とする科学掘削船で、アジマススラスタ6基、サイドスラスタ1基、自動船位保持システム (DPS)、ライザー掘削システムを装備しています。
ライザー掘削とは、船上と海底の孔口装置をライザーパイプでつなぎその中にドリルパイプを降ろして、船上から特殊な泥水を流しながら海底下を深くまで掘進していく技術のことです。
当社の本船修理に対する取り組みとしては、2006年の初回工事より各種の工事実績を重ね、2019年度の定期検査工事を受注することになりました。今回の工事は通常の定期検査工事に加え、VVVFインバーター制御装置 (可変電圧可変周波数制御装置) を始めとする多数の大型機器換装・新規搭載工事があった為、5ヶ月に亘るドック入渠中に外板を計8箇所開口して機器の換装・搭載を行いました。なお、換装・搭載した機器の総重量は200トン以上、パイプ、ダクト等の艤装品数は1000点以上、取り扱い電線長は1kmを超える規模で、建造以来、初めてとなる大規模工事となりました。
本船は、一般の商船よりも構造が複雑で艤装密度が高い上、施工の前例が無い工事であった為、訪船調査、船主・監督打合せ、図面作成、部品手配等の工事準備は1年近くの期間を要しました。工事期間中には多くの追加工事対応の為、都度工程を調整しながら施工していましたが、新型コロナウイルスが世界的に流行し、外国籍クルーの帰国、海外メーカーの渡航規制、国内メーカーの出張規制や部品調達の遅延等の影響を受け、より難しい環境下での施工となりました。
最終的には、船主殿、監督殿、クルー及び関係各位のご協力のもと、半年以上に及ぶ大型工事を無事完了出来たことで、当社にとって大きな実績となりました。国内唯一無二の科学調査船である本船の任務に、修理という形で携われる事に誇りを持ち、今後も本船の工事に携われるよう、会社として取り組んでいきたいと思います。
樋渡 大顕
佐世保重工業(株)艦艇・修繕船営業部艦艇営業課
営業職
近日中のイベントはありません