三菱造船(株)マリンエンジニアリングセンター長崎設計部管内艤設計課 吉野 正剛
FGSSとは、LNG燃料タンク、ガス供給ユニットおよび制御装置などで構成されており、LNG燃料をタンクに保持し、主機関や発電機関が求める適切な量・圧力で取り出して気化・昇温して主機関や発電機関へ供給する、LNG燃料船に必要不可欠な設備です。
当社のFGSSは、LNG運搬船の設計・建造を長年にわたり担うことで培ったノウハウと実績を活かして実現したシステムであり、陸上用のエンジン試験設備の納入実績を積み重ねた上で舶用に展開したものです。当社はFGSS構成機器のモジュール化に取り組み、配置スペースの最適設計および造船所での工程の短縮化を図り、オペレーションニーズに合わせて制御システムなどをカスタマイズすることにより安全運航支援にも寄与しています。
また、FGSS製品供給に加えて、LNG燃料船を建造・運航する国内外の船主や造船所に対し、初期計画・設計・建造・試運転・運航に至るまでの各フェーズで包括的な支援を行っています。例えばIMOタイプCのほか、ISOタンクコンテナ、メンブレンタンク等、各種タンク方式を適用した最適なソリューションの提案、タンク搭載・配管艤装等の現場支援やガスハンドリングオペレーション (ガステストおよび就航後のLNGバンカリングや入出渠前後の特殊オペレーション等)に関する支援 (以下、エンジニアリングサービス) 等を行っています。
特に、LNG燃料船の初期計画は本船運航性能を決める上で最も重要なステップの一つであり、本船の運航プロファイルおよびガスハンドリングオペレーションを考慮の上で、FGSSを含むガスハンドリング機器仕様を決定する必要があります。そのためには、初期計画段階からガスハンドリングに精通したエンジニアの参画が不可欠です。
2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言した日本を含め、近年では世界各国がGHG排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの実現を目指す方針を打ち出しており、世界中で地球温暖化対策として脱炭素化の動きが加速しています。
LNG燃料は、従来の重油燃料と比較してSOxやNOxなどの大気汚染物質の排出量が少ないだけではなく、燃焼して同じ熱量を得るために排出される二酸化炭素の量を表すCO2排出係数の面でも優れているため、船舶の燃料をLNGに変更することでGHG排出量を削減することが可能です。将来的にカーボンニュートラルのLNGを燃料として利用すればGHGゼロを達成することも可能となるため、船舶のLNG燃料化はGHGゼロの実現に向けた最も現実的なブリッジソリューションと言えます。
当社はこうした社会的要請に応え、FGSSの供給およびガスハンドリングに関するエンジニアリングサービスの提供を通じて、各船主が保有する船舶の競争力や各造船所で建造が計画される船舶の付加価値を向上させるとともに、LNG燃料船普及の一助となることで、海上物流のさらなる発展と地球規模で増大している環境負荷の低減に貢献していきます。
吉野 正剛
三菱造船(株)マリンエンジニアリングセンター長崎設計部管内艤設計課
管艤装設計