三菱造船(株)マリンエンジニアリングセンター長崎設計部 佐藤 宏一
画像 1 「さやえんどう」船(開発段階)
画像 2 「さやえんどう」型(完成状態)
画像 3 長船善祐作「造船」
画像 4 「夕映えのLNG船」 by Tomi
本メルマガでも既に紹介の通り、当社は連続タンクカバー型MOSSタンク式LNG船として、球形タンク型の「さやえんどう」型8隻、リンゴタンク型の「サヤリンゴ」型8隻を建造しました。
新しいデザインの船なので、建造中、就航中に人の目を引くことが多いようで、写真、絵画などの題材にされていることもあり、設計者としてはうれしく思います。本記事では、写真と絵画の作品を紹介しながら、連続カバー船の設計を振り返りたいと思います。
まず1枚目の画像は2010年の「三菱重工技報」で紹介された基本設計段階の3Dモデル図です。特定商談前の開発段階で、船級の事前承認を取得し、実商談に備えていた段階です。
2枚目の画像は、その後、受注、設計、建造、引き渡しを経て、2014年にシップオブザイヤーを受賞したときの紹介写真です。通常、コンセプト設計の段階の方が、実物より見栄えの良い絵になっているものですが、本船については、詳細設計が進むにつれて外見も洗練されていったように思えます。
事前設計段階ではデッキ上に乗っていたCargo machinery roomもカバー内に埋め込みとなっており、マニフォールドの開口の処理も洗練化されています。写真では見えませんが、カバー後端と居住区のつなぎも良くなっています。FEMにより構造力学的に最適化することで、意匠的にも自然なものになりました。
3枚目の画像は、若手洋画家の長船善祐氏による、長崎港にて艤装中の「さやえんどう」LNG船の絵画 (油絵) です。三菱重工長崎造船所のジャイアントカンチレバークレーンと合わせて、一時期は対岸の「水辺の森公園」からの風景として長崎市民の間でも定着していました。このような素晴らしい絵の題材にしていただけるのは設計者冥利に尽きます。
最後に紹介するのは、日本船舶海洋工学会第5回フォトコンテスト「運ぶ船、働く船」入選作品 (「夕映えのLNG船」撮影:Tomiさん) です。これは「サヤリンゴ」船ですが、タンクがリンゴ型になったことによりカバー形状が横に広がり、見た目のバランスがさらに良くなりました。夕日を受けて、とても印象的な写真を撮っていただきました。
振り返ると2010年の開発段階から2019年の最終番船の引き渡しまで途中一回の「フルモデルチェンジ」があり、最近の自動車業界より短いスパンでの設計更新となっています。今後も社会の要求に従い、力学的にも外見的にも洗練され、環境にやさしい船の設計を目指していきたいと思います。
佐藤 宏一
三菱造船(株)マリンエンジニアリングセンター長崎設計部
プロジェクトマネジメント、構造設計