(株)新来島どっく技術設計本部基本設計部船型研究所(大西) 安藤 史郎
愛媛県立今治工業高等学校には機械造船科造船コースがあり、その実習授業の一つに当社回流水槽での水槽実験があります。分割模型を用いて行うこの実験について紹介します。
供試模型船は突出したバルバスバウ (バルブ) を持たない垂直船首の肥大船で、中央から少し船首寄りの位置で分割できるようになっています。これを原型として、突出型バルブを持たせた船首形状に改良し、回流水槽で推進性能を確認する、という形で実習を行っています。改良船型の設計と部分模型の製作は学校で行い、当社での実習は船首部分と原型の船尾部分を合体させ、1隻の模型船として完成させるところから始まります。
実習で行う作業は概略以下の通りです。
実習では最初に当社のスタッフが原型の分割模型を使って、説明を交えながら一連の作業を自ら行い、生徒のみなさんに見てもらいます。
原型の計測が終了すれば模型船を水槽から取り出して船首を付け替え、いよいよ改良船型の実験が始まります。ここからは回流水槽の操作も含め、すべての作業を生徒自身で行ってもらいます。私たちも助言はしますが、手伝うようなことはしません。特に模型船に引かれた喫水線と水面が一致するようにウェートの位置を微調整する作業は、表面張力で線が隠れて見えにくくなったり、船が揺れるたびに波が起きたりするので難しいのですが、水槽の両側から声を掛け合ったり左右の担当を交代したり、生徒同士で協力しながら頑張ってやり遂げています。
ウェートの調整が終わると模型船を水槽に固定して水を流し始めます。抵抗値の計測は最初に設定した手順通りに自動で行われますので、実習の中では比較的手が空きます。回流水槽には側面や底面にガラス製の観測部があるのですが、そこから波形を観察したり、写真や動画を撮影したりして、実験を楽しめる時間になっているようです。
これらの作業を用意した改良型船首の数だけ繰り返し、その日の実験は終了します。試験の結果は、抵抗値が原型より下がっていたり高くなっていたりと様々ですが、いずれにしてもいい経験が出来たと思ってもらえれば、私たちも嬉しく思います。
安藤 史郎
(株)新来島どっく技術設計本部基本設計部船型研究所 (大西)