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西部支部メールマガジン第103号

船舶紹介:国立研究開発法人海洋研究開発機構「白鳳丸」延命工事

三菱造船(株)マリンエンジニアリングセンター造船設計部計画設計課 首藤 雄太

2021年11月30日に延命工事が完工しました国立研究開発法人海洋研究開発機構学術研究船「白鳳丸」の概要並びに延命工事内容についてご紹介します。

航走写真

航走写真


船体切明の様子

船体切明の様子


主機関陸揚げの様子

主機関陸揚げの様子


煙突換装前

煙突換装前


煙突換装後

煙突換装後

「白鳳丸」は、極海域を含む全世界の海洋に関する多岐にわたる基礎的研究を行う学術研究船として三菱重工業(株)下関造船所で建造され、1989年5月に東京大学海洋研究所に引き渡されました。2010年に本船が東京大学海洋研究所から海洋研究開発機構に移管された後も、近海・遠洋を問わず、極海域を含めた世界の海を舞台として、長期間の多目的研究航海を実施しています。

基本構造は長船首楼付き全通二層甲板船で、推進性能のみならず、洋上における観測作業に支障のない耐航性能も重視した船型となっています。推進方式として、通常航行時は4機2軸ディーゼル推進により航海速力16ノットを有し、10ノット以下の研究・観測作業時には、2機2軸の電気推進に切り替える2軸ラインシャフト可変ピッチプロペラ方式を採用しています。

なお、ディーゼル推進時は主機関増速時に過負荷とならないよう、プロペラ回転数と翼角をコンビネータ制御にて増速していくプログラムを採用していますが、電気推進時はトルクフルな推進電動機の特性を活かして、プロペラ翼角は固定して増速するプログラムを採用しています。

本船には高性能研究設備として、マルチビーム音響測深装置、CTD解析処理装置、生物資源音響探査装置、船上重力計、音響測位装置、動揺緩衝機能付き観測ウインチなど、数多くの設備が備えられています。

また、本船は研究内容によって10室の研究室を使い分けています。例えば、第7研究室は後部の観測作業甲板に直結したウェット研究室で、採取した海水や海底堆積物コアの処理作業が行えるようにつくられています。また、第5、第6研究室はセミドライ研究室で、研究内容に応じた様々な実験・分析が行われます。こうした部屋には備え付けの実験装置類はほとんどなく、研究航海ごとに必要な研究機材が運び込まれます。

このように、多目的な研究室がある一方、海底地形や気象・海象などの観測作業を行う第1研究室、船上重力計が装備された第9研究室、クリーンルームの第4研究室、低温実験室の第10研究室など、使用目的が限られた専門性の高い研究室も用意されています。

以上の特徴を有する本船ですが、1989年の竣工から31年が経過した2020年5月に、引き続き安全に運用していくため老朽化の著しい箇所や機器についての対策を目的として、延命改造工事が着工されました。具体的には、船体部配管・空調及び救命設備の換装、機関部主機関・発電機・電気推進装置・減速機の換装、並びに調査観測部のウインチ・起倒式ガントリーの延命改造及びマルチビーム音響測深装置の換装に併せた船底ドームの換装 等の工事が実施されました。

本工事に際して、換装する主機関及び主発電機関は今般の環境規制対応のため、低硫黄A重油対応並びにNOx二次規制に適合するものとなっていることに加え、主機関のうちの2台と主発電機関2台については、欧州米国等のより排出規制の厳しいエリアへの入港の対応のため、排ガス管系統に選択触媒還元脱硝装置 (SCR) を装備しています。これに伴い、同装置を内装する煙突を新規製作して換装しました。また、燃費向上や柔軟な機関運用を可能とすべく、電気推進装置は軸発機能及びディーゼル推進時の推進加勢機能を付加しました。

延命改造工事完了後、重量重心査定試験を実施して復原性能を確認するとともに、海上試運転を実施して各種性能確認、作動確認を実施した上で完工となりました。

本船は建造から30年以上の歳月が経過していますが、今回の延命工事による船体性能・調査観測機能・居住性の更新を活かし、今後も引き続き多くの研究者を乗せ、世界中の海において多くの成果を挙げられることを祈念致します。

主要目

全長
100.0m
16.2m
深さ
8.9m
計画満載喫水
6.0m
国際総トン数
4,073トン
航海速力
16ノット
航続距離
12,000マイル
定員
89名 (乗組員54名/研究者等35名)
主推進機関
4サイクルディーゼル機関 1,398kW×4基
推進電動機 300kW×2基
海洋観測研究設備
研究室 (10室)、人工衛星デ-タ受信処理装置、GPS、マルチビーム音響測深装置、精密音響測深機、サブボトムプロファイラー、生物資源音響探査装置、音響測位装置、エアガンコンプレッサ-、ドップラーソナー海潮流計、ADCP、船上重力計
海洋観測研究補助設備
起倒式ガントリー (11ton 船外4.5m)、伸縮ビ-ム (11ton 船外2m)、デッキクレ-ン (3ton)、トラクションウインチ (3基)、スウェルコンペンセータ (2基)、気象関係観測室 (3室)、観測ウインチ(No.1ウインチ 15,000m、No.2ウインチ 12,000m、No.3ウインチ 12,000m、No.4ウインチ 7,000m、No.5ウインチ 6,000m、No.8ウインチ 1,500m)

首藤 雄太
三菱造船(株)マリンエンジニアリングセンター造船設計部計画設計課
計画設計

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