鹿児島大学水産学部 仁科 文子
写真1 GPSゾンデのセンサー部。観測開始前にデータの受信確認を行なっている。
写真2 ガスを入れて膨らませたバルーンが風に煽られないよう皆で支えて船尾に移動。
写真3 GPSゾンデを飛ばす。
写真4 コンパスデッキに設置したアンテナとブリッジに置いた受信機でデータを受信し、リアルタイムで観測状況をチェック。
写真5 XCTD (投棄式水温・塩分計) で海洋観測を行なう
写真6 集合写真
2019年7月の「西日本豪雨」や「令和2年7月豪雨」など、梅雨期の豪雨災害が近年多発しています。これらの豪雨災害は線状降水帯による降雨が継続したことが一因とされています。そのため、豪雨災害を引き起こす線状降水帯のメカニズムの解明が急がれています。九州や西日本で梅雨期に発生する線状降水帯には東シナ海側から梅雨前線域への水蒸気供給が大きく関係していると考えられています。
そこで2022年6月~7月に、気象研究所とhotspot2計画に参加している14の大学・研究機関が連携し、梅雨前線域への水蒸気の供給ルートがある(あるいは供給源となる)東シナ海での集中気象観測が実施され、鹿児島大学は附属練習船「かごしま丸」で参加しました。
鹿児島大学水産学部水圏科学分野では毎年6月に附属練習船「かごしま丸」で学部3年生対象の海洋環境・海上気象観測の乗船実習「海洋観測乗船実習Ⅰ」を行なっています。2022年6月の実習では、上記集中観測の一環として、東シナ海の黒潮の暖水域が大気環境に与える影響を調べるための海上気象観測および海洋観測を実施しました。
観測内容は、(1) 九州西方の黒潮域に配置した72の格子点でGPSゾンデと海洋の温度や塩分の計測、(2) 黒潮を横断する観測線上でのGPSゾンデと海洋の水温や塩分の計測、の2種類で、(1) は三重大学大学院生物資源学研究科附属練習船「勢水丸」、長崎大学水産学部附属練習船「長崎丸」との合同観測、(2)は鹿児島大学オリジナルの観測で黒潮上を3回横断観測しました。GPSゾンデのデータは受信機で受信し、コンピュータでデータ処理を行なった後、すぐに気象庁に送信され、気象予報に活用されました。
現在、参加機関がデータを使用して研究を進めていますが、(2) の観測結果を用いて、黒潮が直上大気におよぼす影響を評価することを目的に水産学部4年生が卒業研究を行い、黒潮の暖水上では隣接海域と比べて風速が速くなること、雨雲を発生・発達させるような対流活動を小規模ながら活発化させる可能性があることがわかりました。
仁科 文子
鹿児島大学水産学部
海洋物理学
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