長崎総合科学大学附属図書館 上川 ひろみ
長崎総合科学大学のグリーンヒルキャンパスは、穏やかな橘湾を望む山沿いにあります。本学の母体は戦前に設立された川南高等造船学校であり、現在でも日本で唯一の船舶工学コースを有する特色のある大学です。
本学の船舶工学コースでは、海岸清掃や海中探査ロボットでの観察、子どもたちへのワークショップなどSDGsに関連した取り組みが継続して行われてきました。今年7月、この取り組みを図書館でパネル展として紹介するとともに、今年度から新設された科目「海洋生物と環境」の最終講義を図書館で実施する運びとなりました。
きっかけは、九州地区の私立大学図書館の研究会で、SDGsをテーマにした事例報告を本学図書館が担当することでした。SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」に関連したことが図書館でできないかと船舶工学コースの教員に相談したところ、図書の紹介(『海洋へのいざない』日本船舶海洋工学会)と新設科目の情報を得、その後の打ち合わせで、上記のような企画にまとまりました。
7月1日から実施した船舶工学コースの活動紹介パネル展では、海中探査ロボットや伊王島のサンゴの映像、教員が発行している船舶ニュース、5月に産学官の4団体で受賞した日本船舶海洋工学会社会貢献賞の写真など、SDGsに関連した資料を中心に展示しました。パネル展を図書館で実施することで、他のコースの学生や教職員の目に留まり、SDGsを自分事として捉える機会になったのではと思います。
併せて、「知りたい守りたい私たちの豊かな海」と題して、前述の図書を含めた海と環境に関する本の特集コーナーを設けました。これらの本は、次に紹介する「海洋生物と環境」の課題レポートの参考文献としても使用されています。
「海洋生物と環境」は今年度から新設された船舶工学コース3年次の選択科目です。4名の担当教員は、船舶工学コース、本学生命環境工学コース、そして長崎大学環東シナ海環境資源研究センター所属と、それぞれ専門分野が異なり、講義では、東シナ海や長崎沿岸海域で起きている海洋生物や海洋環境の変化について多角的に学ぶことができます。
7月28日に図書館で実施した最終講義では、学生による橘湾の水質調査の報告と、教員によるまとめの講話がありました。前週に行った海水の採取には私も同行し、船上から海の雄大さを体感することができました。水質調査の結果、橘湾河口・沖ともにほぼきれいな水であり、県の調査結果とも大きく変わらないことがわかりました。
試験前ということもあり、自由参加の学生がおらず残念でしたが、普段、造船について学んでいる学生からは、改めて身近な海を守ることの大切さを実感できたとの声が上がりました。ちなみに、図書館の本を使ったレポート課題では、海の豊かさを守るためにできることとして、「船のバラスト水の適切な処理」、「藻場を守る」、「洋上風力発電など再生可能エネルギーの活用」などのほかに、「認証マークの水産物を購入」、「温暖化防止のための節電」、「プラスチックごみの削減」などが挙げられていました。本を読むことで学びが深まり、様々な視点から意見が出されていたように思います。
今回、初めて船舶工学コースと連携し、図書館でパネル展と講義を実施しました。反省点もありますが、今後も工夫を重ねてこのような取り組みを継続し、SDGsの啓発ができればと思います。なお、9月8日に図書館の研究会があり、船舶工学コースとの連携を含めたSDGsの取り組みの報告を無事に終えることができました。この場をお借りして、船舶工学コース各位にお礼を申し上げます。
上川 ひろみ
長崎総合科学大学附属図書館
司書