尾道造船(株)設計部船殻設計課 牧崎 匡彦
スリランカ民主社会主義共和国はインド洋に浮かぶ島国です。年中温暖な気候と豊かな自然から「インド洋の真珠」と称されます。九州の1.2倍程の国土に現在約2200万人が暮らしています。
そのスリランカの最大都市コロンボの港を主要拠点とするColombo Dockyard PLC (略称CDPLC) は1993年に尾道造船が主要株主となり資本進出したスリランカ唯一の重工業会社です。元々1906年に英国艦隊修繕基地として創業した長い歴史を持ち、約3000人の従業員が新造船、修繕船、重工業に従事しています。
修繕は年間約200隻、新造はケーブル敷設船、貨物船、客船等の様々な船の建造を行っています。重工業は高架橋、水中レストラン等の建造を行っています。これまでに延べ14回、315名の研修生を弊社尾道造船所で受け入れ技術指導を行ってきました。
CDPLCから船舶開発等の設計分野を強化したいという支援要請を受け、2023年に3名の研修生を設計部に迎え入れました。3~6ヵ月ほどの研修期間で船舶開発課、船殻設計課、機電設計課にそれぞれ一名が配属され研修が行われました。
船殻設計課では主に縦強度の計算や係船下部補強計算、NK規則新C編の計算等の研修、船舶開発課ではトリム計算や復原性やダメージスタビリティの計算等の研修、機電設計課では配管の詳細設計等の研修を行いました。
また他にも、試運転への乗船や進水式への参加、弊社以外にも取引先の工場設備の見学やショップテストへの参加等も行いました。進水式ではCDPLCがドック進水であるのに対して、弊社は船台進水のため迫力があったようで、研修生たちは特に喜んでいました。
研修生と交流する中で、日常生活の面では文化の違いがあるため、研修生にとっても私自身にとっても新鮮な体験になりました。
スリランカでは多くの人たちが、毎日のようにカレーを食べるようです。スリランカカレーは、クミンやターメリックなど複数の日本とは異なるスパイスを使用し、チキンカレーや豆カレーなど数種類のカレーを一皿に盛り合わせるのが基本です。
手作りのカレーを食べさせてもらいましたが、味や香り、辛さが日本とは全く異なりました。味はとても美味しかったのですが、食べ進めるうちに徐々に辛くなり、汗が止まらなくなりました。逆に研修生たちには社食のカレーでは物足りないようで、外食時には超激辛カレーを好んで食べていました。
他にも、基本的に刺身や卵焼きなどの生ものや半生の料理は食べる習慣がなく、豚肉は不浄であるという理由で食べないなど食事には苦労していました。
それでも食事中にはスリランカと日本の面白い違いなどについて楽しく話し合うことができました。例えば、スリランカのハンバーガーショップには、カレーライスのメニューがあることや満月の日が祝日になること、人気のある洋画の公開日には、映画館の前で象がくるパレードが開催されるなど知らないことばかりで面白かったです。
研修生たちは、日本語を喋れないため異国である日本に来てからの数ヵ月間の生活は不安なことや大変なことも多かったと思います。私自身、英会話能力が長けているわけではなかったので自分の伝えたいことが相手に伝わらなく苦労したことも多かったです。しかし、数ヵ月の研修期間の中で毎日コミュニケーションをとり、仕事の垣根を越えてとても良い交流ができたと思っています。
牧崎 匡彦
尾道造船(株)設計部船殻設計課
船殻設計