広島大学大学院先進理工系科学研究科 陸田 秀実
広島大学は、2024年に創立75周年を迎えます。最も古い前身校である白島学校が設立された1874年から1949年 (原爆投下から4年後) に新制広島大学が誕生するまでが75年、それから数えると、2024年はちょうど150周年になります。この節目にあたり、現在、広島大学が重点的に取り組む五つの重点事項として、「President 5 Initiatives for Peace Sciences ~新しい平和科学 (安全・安心を実現する「創る平和」)~」が公表され、その一つに「海洋・海事のガバナンスと持続可能性のためのアジア拠点形成」が選定されました。これは、広島大学の理念である「平和を希求する精神」を堅持しつつ、「海の平和を創る」取り組みです。本稿では、次の75年に向かって挑戦し続ける広島大学の最近の取り組みを、海洋・海事分野を中心に紹介します。
2023年3月17日に、広島大学と海上保安大学校は包括協定を締結し、教育・研究活動の包括的な交流と連携・協力の推進を始めました。また、2023年7月8日には、広島大学は呉市・海上保安大学校・公益財団法人笹川平和財団・世界海事大学と、海洋・海事の国際的拠点の拠点形成と地域社会等の活性化を図ることを目的に、包括協定を締結しました (図-1)。
この協定に基づいて、2024年1月31日には、呉市・広島大学Town & Gown構想を推進し、行政機関や教育機関、海洋・海事の関係団体、企業などから構成される「海洋文化都市くれ推進協議会」を設立しました (図-2)。ここで、Town & Gown構想とは、Town (都市) と Gown (大学) が共創して街づくりに取り組み、共に発展を目指す地域創生プロジェクトのことです。
さらに、2024年3月14日、広島大学は、海上保安大学校及び富山高等専門学校、鳥羽商船高等専門学校、広島商船高等専門学校、大島商船高等専門学校、弓削商船高等専門学校の全国五つの商船系高等専門学校と交流と連携・協力の推進に関する7者による包括協定を締結しました (図-3)。
これらの締結は、「広島大学の船舶海洋工学分野を含む総合研究大学の教育力・学術研究」、「商船系高専の商船・航海分野を含む学際的な実践教育」、「海上保安大学校の海上安全業務に関わる実務教育」の三つをかけ合わせて、(学術)×(実践)×(実務) による相乗効果の高い教育・研究を推進し、様々な分野の研究、高いレベルの国際的な人材育成に取り組むことを目的としています。
以上の取り組みのもと、教育面においては、総合的な問題解決能力を有する「地域のための」「地域に貢献する」人材を育成する「地域共創教育プログラム」を推し進めることで、「幅広い知識・技能力」「確かな専門力・探求力」「社会に役立つ解決力・実践力」を養っていきます。
具体的には、以下を行っていきます。
また、研究面においては、以下の研究開発を重点的に進めていきます。
以上、産官学金の包括的な取り組みのもとで、海洋・海事分野における地域共創と地域活性化、当該分野の人材育成と持続的輩出、さらには広島大学のさらなる深化へと繋げていき、次の75年に向かって挑戦し続けていきます。
陸田 秀実
広島大学大学院先進理工系科学研究科
流体工学