海の不思議箱トップページ > 記事一覧 >木船から鉄船へ
現在の多くの船は、鉄でできています。船が海を航行すると、波や流れから力を受けますが、力を受けたときに変形したり、破損したりしないように、丈夫な鉄が用いられています。では、鉄は船にいつごろから用いられるようになったのでしょうか?昔は、船は木材でできていました。鉄も昔から細々と作られていましたが、船の材料として用いられることはほとんどありませんでした。16世紀ごろから、ヨーロッパ等を中心として、産業的に製鉄が行われるようになってきました。製鉄の方法は、鉄鉱石に含まれる酸化鉄の酸素と、木炭に含まれる炭素を結合させて二酸化炭素を生成し、酸素と離れた鉄を得るものでした。この方法では、鉄鉱石を溶かすために、炉内を高温にする必要があったので、大量の木炭と、大量の酸素の送り込みが必要でした。その結果、森林資源が枯渇し、特に森林資源が少ないイギリスは製鉄業で大きな打撃を受けました。18世紀には、石炭、つづいてコークスを用いた製鉄法がイギリスで確立されましたが、造船に用いていた良質の樫材は既に手に入りにくくなっていました。そこで、イギリスは、木炭を使用しない製鉄業の発展と森林資源の枯渇を背景として、鉄を用いた船を造り始めました。最初の鉄船として記録されているのは、1819年に建造され、クライド運河で客船として使用されたバルカンです。その後、バルカンは石炭運搬船として1875年まで使用されました。現在は、多くの船が強度の高い鉄を採用し、炭素との合金である鋼(軟鋼)を使用して船体を作っています。今後は、より軽く、比較的強度がある繊維強化プラスティック(FRP)などの新たな素材が試されていくかもしれません。
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