トップページ > 表彰 > シップ・オブ・ザ・イヤー 2014 大型貨物船「さやえんどうLNG船」に決定
公益社団法人日本船舶海洋工学会が授賞する「シップ・オブ・ザ・イヤー」は、毎年日本で建造された話題の船舶の中から、技術的・芸術的・社会的に優れた船を選考して与えられるもので、25回目となる今年は合計8隻の応募がありました。
「シップ・オブ・ザ・イヤー」の応募作品発表会と選考委員会は、去る6月9日(火)東京都港区の明治記念館で開催され、「シップ・オブ・ザ・イヤー2014」には液化天然ガス運搬船の「さやえんどうLNG船」(155型LNGシリーズ船)が選ばれました。
また各部門賞には、貨客船「橘丸」(大型客船部門)、フェリー「太古」(小型客船部門)、レール運搬船「PACIFIC SPIKE」(大型貨物船部門)、コンテナ船「ふたば」(小型貨物船部門)、練習船「おしょろ丸」(漁船・作業船部門)がそれぞれ選ばれました。
授賞式は、日本マリンエンジニアリング学会のマリンエンジニアリング・オブ・ザ・イヤーおよび日本航海学会の航海功績賞の表彰と共に、海事三学会合同表彰式として7月27日(月)に海運クラブにおいて行われる予定です。
なお、シップ・オブ・ザ・イヤー選考委員は下記のとおりです。
「シップ・オブ・ザ・イヤー2014」には、大型客船部門に1隻、小型客船部門に2隻、大型貨物船部門に2隻、小型貨物船部門に2隻、漁船・作業船部門に1隻の計8隻の応募があった。これを受けて4月23日に技術の専門家からなる予備審査委員会が開かれ、全8隻が本選考委員会に推薦されたが、その後小型貨物船部門の1隻は残念ながら辞退されたため、計7隻が6月9日の本審査を迎えた。
明治記念館(東京都港区)若竹の間で日本船舶海洋工学会の一般会員も多数聴講する中、各応募船の熱いプレゼンテーションが行われ、続いて部屋を移して選考委員会が開催された。13名の選考委員のうち11名が出席し(内1名は公平を期し投票を辞退)、会場でプレゼンテーションを聞いた一般会員による投票の最多得票船を1票として加算、満票で11票ということで審査を開始した。
事前の予備審査委員会での審査項目(技術の独創性・革新性、技術・作品の完成度、社会への波及効果、話題性・アピール度)の採点結果およびコメントも参考にして選考が進められ、全候補作品から最優秀作品一点をシップ・オブ・ザ・イヤーとして選定し、応募部門ごとに優秀な作品に対してはシップ・オブ・ザ・イヤー部門賞を授与する選考方法とした。
最優秀作品一点の第1回目の投票では過半数を得る作品がなく、上位を占めた大型貨物船「さやえんどうLNG船」と「PACIFIC SPIKE」の2隻を対象とする決戦投票を行った結果、4つの球形タンクをつつみこむ、船体と一体構造の連続カバーを採用し、構造重量の軽減と風圧抵抗の削減を実現し、主機関には熱効率を高めた再熱タービンプラントを採用して燃費効率を改善した、液化天然ガス運搬船「さやえんどうLNG船」(155型LNGシリーズ船)が、見事「シップ・オブ・ザ・イヤー2014」の栄冠を手にした。
続いて、各部門賞の選考を実施し、大型客船部門では、タンデムハイブリッド型CRP推進方式を採用して大幅な省エネを実現した貨客船「橘丸」、小型客船部門では、特徴ある双船尾船型を踏襲しつつ、船型の大型化とともに推進性能や居住性を改善したフェリー「太古」、大型貨物船部門では、世界最長の150mレールを海上輸送できる世界初の長尺レール専用船「PACIFIC SPIKE」、小型貨物船部門では、内航コンテナ船では初めての電気推進方式と、船首ブリッジの採用で騒音を改善した「ふたば」、漁船・作業船部門では、極域まで航行可能な耐氷構造をもち、電気推進システムと防振・防音設計で高性能な調査船を実現した「おしょろ丸」が、それぞれ部門賞に選ばれた。
選考委員長 森本 靖之
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シップ・オブ・ザ・イヤー 2014 |
「さやえんどうLNG船」 | |
「さやえんどう」は155,000m3積みLNG船のシリーズ名であり、連続カバー (さや) の中に球形タンク (まめ) が入っている形に由来している。 従来のMOSS方式LNG船は、球形アルミタンクを半球状の鋼製独立カバーで覆っていたが、カバーは構造強度には寄与していなかった。本船は、球形タンク4基を連続したカバーで覆い、カバーを船体と一体化することで全体強度を向上させつつ、付加的な構造物を減らして船体重量の軽量化を実現した。また推進上抵抗となる正面からの風圧力の大幅な軽減効果も得られている。主機関には再熱サイクルで熱効率を高めたUltra Steam Turbine Plant (UST:再熱舶用蒸気タービン機関) を採用し、連続カバーの効果と併せて燃費性能を大きく改善させている。これらの技術の斬新さと完成度の高さが評価され、シップ・オブ・ザ・イヤー2014に輝いた。 |
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大型客船部門賞 |
「橘丸」 | |
タンデムハイブリッド型CRP推進方式を採用した最新鋭の貨客船で2014年6月より東京〜八丈島航路に就航し、「離島の生活基盤を支えるスーパーエコシップ」として活躍している。在来の2機2軸船に対して、船全体での省エネは15.6%に達した。またアジマス推進器装備による優れた港内操船能力で、離着桟の安全性、迅速性が大幅に向上した。島民生活の向上、地域経済の発展と活性化に寄与し、伊豆諸島全体の発展に大きく貢献することが期待される。 | |
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小型客船部門賞 |
「太古」 | |
博多と五島列島を結ぶ航路に就航する高速フェリー。“太古”の船名を継承し、地域の足として期待を寄せられている。 特徴ある双船尾船型を踏襲しつつ、大型化とともに推進性能、操縦性能、耐航性能を改善している。合わせて騒音・振動対策や内装・設備の充実にも力が入れられ、オーソドックスだがより快適でフォルムの美しい船となっている。 |
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大型貨物船部門賞 |
「PACIFIC SPIKE」 | |
本船は世界最長の150mレールを海上輸送する目的で建造された世界初の長尺レール運搬船である。水密隔壁の無い単一のロングホールドと、シンクロ制御及びリモコン操作可能な3基のデッキクレーンにより、従来は切断して分割輸送していたレールを、150mの長さで運べるようになり、日本製の高品質レールを長尺のまま海外へ輸出することを可能とした。 | |
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小型貨物船部門賞 |
「ふたば」 | |
内航コンテナ船では初めての電気推進船。2基の主発電機関、2軸の可変ピッチプロペラを装備し、さらに1基のエンジンだけでの省エネ運航も可能となっている。電気推進方式に加えて船首ブリッジとした効果もあり、騒音が少なく乗組員の居住環境が大幅に改善した。 | |
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漁船・作業船部門賞 |
「おしょろ丸」 | |
北海道大学水産学部の5代目練習船。船尾トロール船型をベースに頑丈な耐氷構造とし、静粛性を考慮した電気推進システムと熟考された防振・防音設計で水中放射雑音を著しく低減させ、極域や荒天時においても精密な音響データ取得ができる。良好な復原性に加え、各種減揺装置により「静かで揺れない洋上キャンパス」が実現されている。 | |
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