今年の艇 Solar ABA ABA 10[拡大画像] |
長崎総合科学大学では、10 年前からソーラーボートの設計と製作を行ってきました。そして各地の大会に出場し、かなりの成績を残してきたので、簡単に紹介します。
ソーラーボートの大会の規定では、レースの公正を期す為に、船体の主寸法に制限がつく以外に、搭載するソーラーパネルの発電量とバッテリーの容量が制限される (バッテリーは主催者から提供されるのが普通です)。その他のモーター出力等は自由です。
本学のソーラーボートは、後述する柳川の大会の規定に合わせて造られていて、長さが最大の 4m、パネルの発電量は 100W です。なお、水中翼をつけ、船体を浮かせて走ることは認められていません。浜名湖の大会では、480W のクラスがあり、このクラスでは水中翼が認められています。
船体は FRP 製で、雌型をベニヤで製作し、そこにマットとクロスをそれぞれ 1 枚のみ積層し、軽く仕上げています。そのため、チャインのある船型として、必要な強度を確保しています。
モーターは出力 503W の直流モーターで、スプロケットとチェーンで減速し、シャフトに回転を伝えています。プロペラは、ステンレス板をねじり、断面を翼型に仕上げたブレ−ドをボスに溶接した自作の物です。
バッテリーからの電流は、ボリュームで調整できるコントローラを介してモーターに流れ、スピードの調整ができます。なお、コントローラによる電力ロスを避け、最高速力を出すため、直接バッテリーとモーターを接続する回路もあり、スイッチで切り替えています。
100W のパネルでは、発電量が少なく、直接モーターに接続して走ることは出来ません。発電した電気をバッテリーに一度蓄え、その蓄えたバッテリーの電気を使って走行します。そのため、長時間のレースでは、速く走るとバッテリーの電力を使い切ってしまいリタイヤとなります。だからと言ってあまり遅く走ると完走は出来るが、勝つことは出来ません。ゴールと同時にバッテリーの電気を使い切るのが賢い走り方で、作戦が必要です。ここにソーラーボートレースの難しさと面白さがあります。
柳川大会周回決勝レースのスタート[拡大画像] |
毎年 8 月上旬に福岡県の柳川市の掘割で開催される大会で、一般の部約 20 艇、学生の部約 50 艇、計約 70 艇が参加します。おそらく世界一の規模のソーラーボート大会であると思われます。
競技種目と内容は、つぎのようになっています。
先ず、一周約 3.1km の掘割を周回する予選を行い、タイムの良い順に一般の部は 10 艇、学生の部は 20 艇が決勝に進出します。
決勝は、掘割を 3 周します。30 艇がカーレースのように先導艇に従って隊列を組んで進行し、合図と共に一斉にスタートします。後方の艇は多数の艇の曳波を受けるので、安定性の悪い船は転覆することもあります。
400W の地上の発電パネルが貸与されるので、船が走っている間に、2 組のバッテリーのうちの 1 組をこのパネルで充電しておき、船のもう 1 組のバッテリーと岸のピットで交換します。すなわち、ピット作業のすばやさも成績に影響します。
音楽に合わせて演技をし、その内容を審査員が採点し、順位をつけます。船体に装飾することも許されているので、いろいろな船が出てきて、見ていて楽しい種目です。
コース上に置かれた 10 本のブイの間をスラロームしてタイムを競います。そのため、艇の操縦性とドライバーの技術が重要です。
本学の今年の成績は、ボートをラジコンのサメが襲う趣向が受けて、フリースタイルで学生部門準優勝した以外は、ハンドルの故障もありあまり振るいませんでした。
これまで、8 月下旬に浜名湖競艇場で開催されていましたが、今年は浜松市近郊の佐鳴湖で開催されました。ソーラーボートはパネルのワット数で、人力ボートは水中翼の有り無しで、それぞれ二つのクラスに分けられています。他に、ソーラーと人力併用のハイブリットがあるので、全部で五つのクラスがあります。柳川のように一般と学生に分かれてはいません。
レースは、(1) ショートレース、(2) 1 周スラロームレース、(3) 30 分耐久レース、(4) 1 時間耐久レースの 4 種目です。
本学の艇は、ソーラーの 100W クラスで、(1) ショートレースで準優勝だった以外は残りのレース (但し、(3) は不参加) の全てで優勝し、その結果、ソーラーボートの部門で学生優勝しました。
レースに出る以上は上位入賞を目指していることはもちろんですが、それ以上に 1 年振りに同好の士と会い、お互いの技術や苦労話を交換することもまた楽しい。この楽しみがあるから、これまで続けて来られたのだと思います。
100W クラスの排水量型のソーラーボートは、費用もあまりかからず、製作する上でもそれほどの困難はないので、職場や学校で仲間を募って、造ってみては如何でしょうか?そして、レース出る楽しさを是非味わって下さい。