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海上試運転中の「ちきゅう」[拡大画像] |
「ちきゅう」は、(独)海洋研究開発機構殿で進められている OD21 プロジェクトの中心的役割を担う船として建造されました。本プロジェクトは、深海で科学掘削を行って海底下の岩石サンプル (コア) を採取し、また掘削した孔内に計測装置を設置して長期観測することにより、地震発生過程の解明や地震発生の地球環境変動の研究を推進するというものです。
本船は船体部を三井造船(株)玉野事業所殿で建造され、長崎に回航して掘削システム等の工事を行い、2005 年 7 月 29 日に完工しました。
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全体配置[拡大画像] |
これまでの科学掘削船はドリルパイプだけで掘るライザーレス方式であったため、孔壁が不安定で深い穴を掘る事が困難であり、最大深度は海底下約 2,000m が限界でした。また石油やガスが噴出する可能性のある場合の掘削も困難でした。「ちきゅう」はライザー方式を採用し、特殊な泥水を孔内に送り込み孔壁を保護すると共に、予想外のガス層に遭遇した際に噴出を防止する装置 BOP (Blowout Preventer) を持つ事で、水深 2,500m の海域で海底下 7,000m 以上の掘削を可能としました。
本船は、推進システムとしてはアジマス式電動スラスタによる電気推進システムを採用しています。定点保持をしながら掘削作業を行うために、風、潮流、波などの外乱を受けても所定の精度で位置保持ができるように 7 基のスラスタによる DPS (Dynamic Positioning System) を搭載しています。
なお「ちきゅう」については日本船舶海洋工学会誌 KANRIN 第 3 号 (2005 年 11 月発行、特集 : あたらしいもの) に記事が掲載されておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。
※海上試運転中の「ちきゅう」の写真および全体配置図は、(独)海洋研究開発機構殿の御提供によります。
全長×幅×深さ−喫水 | 210.0m × 38.0m × 16.2〜9.2m |
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高さ (水面からデリック頂上まで) | 約 120m |
総トン数 | 57,087 トン |
最大搭載人員 | 150 人 (内 研究者 50 人) |
航海速力 | 約 10 ノット |
最大稼動水深 | 2,500m (将来 4,000m) |
ドリルストリング長さ | 10,000m (将来 12,000m) |
発電機 | (主) 5,000kW × 6 台 (補助) 2,500kW × 2 台 |
アジマススラスタ | 4,200kW × 6 基 |
サイドスラスタ | 2,550kW × 1 基 |
「ちきゅう」の完成に先立ち、船舶海洋工学会西部支部の会員向けに当所香焼工場にて見学会を開催しました。各大学の先生方、学生のみなさんが 55 名、造船会社 7 社から 32 名の総勢 87 名の方にご見学頂きました。