私は今回 2006 年 6 月から 9 ヶ月間、ノルウェー王国トロンハイム市にあるノルウェー科学技術大学 (Norwegian University of Science and Technology, NTNU) に、在外研究員として滞在する機会に恵まれました。まだ滞在して 3 ヶ月程度ですが、この街と大学について紹介したいと思います。
写真1 街の中心にあるニーダロス大聖堂 (バロック様式)。北欧でも最大級の中世の建物でトロンハイムのシンボルです。毎日、観光客でにぎわっています。[拡大画像] |
トロンハイム市はノルウェーの首都オスロから北へ 500km 離れた北極圏にほど近い北緯 63 度に位置します。この街はヴァイキング王 Olav Tryggvason が AD 997 年に Nidaros と呼んで以来、ノルウェー王国最初の首都となり、現在では 1000 年以上もの長い歴史を持つ北欧の古都です。街の中心にはゴシック様式のニーダロス大聖堂 (写真 1)、そしてニデルヴァ川がゆうゆうと流れ、北にはフィヨルド、南には緑豊かな自然と小高い丘が広がっています。この丘には、赤、黄、白、緑の色鮮やかな木製の家々が立ち並び、童話に出てくるような街並み (写真 2) が続いています。現在は人口 15 万人、海運業を中心にハイテク産業の研究所、そして今回私が訪問しているノルウェー科学技術大学 (写真 3) があり、ノルウェー第 3 の都市として発展し続けています。ここトロンハイムはこの大学の学生を中心とする活気に満ちた街で、その意味においては広島大学のある東広島市によく似ているかもしれません。
写真2 街の南にある小高い丘。色とりどりの家々が立ち並んでいます。この丘の頂上にはタワーがあり、その直ぐ脇に MARINTEK 研究所と CeSOS があります。[拡大画像] | 写真3 中央の建物群がノルウェー科学技術大学のメインキャンパス。北欧のデザインセンスを感じさせる外観です。内装についてもデザイン性が高くかつ近代的であり、すばらしい教育・研究環境と言えます。奥に見えるのは、トロンハイム中心街とニデルヴァ川。(NTNU 広報誌より引用)[拡大画像] |
ノルウェー科学技術大学は 7 学部、約 25,000 の学生が在籍するノルウェーを代表する国立大学です。この大学は科学技術関連の学部だけでなく、医学部、人文・社会科学関連の学部も擁する総合大学であり、ノルウェー産業界にとって重要な人材輩出機関となっています。船舶・海洋工学科および専攻には、25 人の教授陣とその他50人のスタッフ、そして学部および修士課程 500 人、博士課程 50 人が在籍し、この中には 20 カ国からの留学生が含まれているそうで、非常に国際的かつ大所帯と言えます。大学院入学の際には TOEFL 500 点以上が必要で、大学院講義は全て英語で行われています。また、最終セメスタで行われる修士論文は全て英語で執筆され、その研究内容および論文構成は非常に高いものであると感じました。
写真4 夏至祭 (6/23) のパレード。民族衣装を着た沢山の人々が、街の中央広場からニーダロス大聖堂まで行進をしています。小学生から中学生ぐらいの子供は、様々な楽器を持って演奏パレードを行います。[拡大画像] |
この大学はノルウェー王国の重点領域研究 (いわゆる COE) 13 分野のうち 3 分野を取得しており、その内の一つが船舶・海洋工学分野です。私の所属する Centre for Ships and Ocean Structures (CeSOS) には、毎年約 6000 万円程度 (2003 年〜 2013 年の 10 年間) が投入され、世界トップレベルの船舶・海洋工学に関する研究と技術者の養成が行われており、今年で 4 年目を迎えます。この CeSOS には教授陣、訪問研究員、ドクターを併せて 50 人程度が在籍しており、私は Faltinsen 教授の指導の下、CFD (Computational Fluid Dynamics) 研究を行っています。このセンターは MARINTEK 研究所 (Norweigian Marine Technology Research Institute) の建物内にあり、この研究所にも 250 人の研究者が船舶・海洋工学の研究に従事しています。私の居室はこの MARINTEK の建物内にあり、毎日アパートから丘 (写真 2) を登り通勤 (徒歩 30 分) しています。ここ MARINTEK には平面水槽 (L80m × B50m × D10m)、三つの曳航水槽 (L178m × B10.5m × D5.5m、L30m × B2m × D1m、L82m × B2m × D10m)、回流水槽 (13m × 25m × 1.2m) があり、世界トップレベルの研究を CeSOS と共同で行っています。
最後にこの街のフェスティバルを少し紹介します。写真 4 はノルウェー中で行われる夏至祭 (6/23) の様子です。また、7/27 〜 8/5 にはトロンハイム市の最大イベント、オラヴ・フェスティバルが行われました。このフェスティバルではクラッシック・ジャズのコンサート、フード・フェスタ、ノルウェー文化・歴史に関するイベント等が 10 日間も行われました。