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シンガポール修繕ヤードの昨今と町の様子

有明設計(株)船体設計室 中園 博

造船に携わる人間にとって建造船就航後のメインテナンスを行うシンガポールという国は馴染みが深く、良くご存知の方も多いと思いますが、私は当社の建造船がドックするということで昨年は訪問することが多く、今回シンガポールの修繕ヤードと町の昨今の様子を紹介します。

シンガポールは、琵琶湖とほぼ同じ面積の島に現在人口は約 400 万人、そのうち中国人が約 77% でその他マレー人、インド人などで構成される多民族国家です。飛行機がチャンギ国際空港に着陸する折に、島の南方海上を見るとたくさんの船が投錨しているのは相変わらずの光景です。全ての船がドックする訳ではないでしょうが、その数にはいつもながら驚かされます。

図1 シンガポール全体地図
図1 シンガポール全体地図[拡大画像]

当社で建造しているのは VLCC が中心で、しかも、ダブルハルになったので、船幅が大きく、ドックするにも限られた修繕ヤードとなります。私が訪問したのはそのうちのケッペル造船所とセンバワン造船所です。図 1 に示すように、シンガポールの中心をオーチャードロードとすればケッペル造船所 (Tuas) はその西の外れ、センバワン造船所 (Sembawang) は北の外れです。双方とも中心街から車で約 30 分とほぼ同じ距離です。

ケッペル造船所は VLCC が入れるドックが 2 基と一回り小さいドックが 1 基、工事ができる岸壁が 8 隻分あり、常に満杯の状態です。そこで働いているのは一握りの中国人スタッフとその下のほとんどがフィリッピンやバングラデシュといった後進国からの出稼ぎの人たちです。造船所の近くにマレーシアに渡る橋があるため、毎日マレーシアからもたくさんの労働者が通勤しています。以前はシンガポール人もたくさん働いていましたが、人件費節減のため、今は少なくなったそうです (たまたま行ったチャイナタウンのマッサージ店のマッサージ士は元ケッペル造船所の溶接工であったそうな)。

図2 ケッペル造船所岸壁工事風景 (手前から2隻目が FPSO への改造工事)
図2 ケッペル造船所岸壁工事風景 (手前から2隻目が FPSO への改造工事)[拡大画像]

ヤードマネージャーの弁によれば、最近は船の修繕工事よりもオフショアー関係の仕事の方が実入りが良く、特にタンカーを FPSO に改造する工事に精を出しています。造船所は今特に安全に力を入れており、以前は柱が細く、ぐらついていた足場も最近は必要以上と思えるほどしっかりしたものに変わっています。修繕工事は相変わらず土日なしの 24 時間体制で、蒸し暑い昼間よりも涼しい夜間の方が、工事が捗るようです (図 2)。

一方、センバワン造船所は未だ船舶の修繕工事が主ですが、ケッペルに遅れて、オフショアー関係にも展開しようとしています。ドックは通常のものが 2 基とフローテイングドックが 2 基です。そのうちのプレミアドックと呼ばれる一番大きなドックに VLCC が入ることができます。工事岸壁は長く、VLCC 7 隻程度は同時に工事ができそうです。そこで働いている人たちはケッペル造船所と全く同じ陣容です。シンガポールの中では良く修繕ヤード同士の横通しがなされている様子で、工事管理要領等々ケッペルと良く似たところがあります。両造船所とも韓国の造船関係者がいつも多数来ているということも付記しておきます。

図3 オーチャードロードの雑踏
図3 オーチャードロードの雑踏[拡大画像]
図4 チャイナタウンのお土産屋風景
図4 チャイナタウンのお土産屋風景[拡大画像]

最近の町の様子としては、中心のオーチャードロードでは数年前まで良くビル建設や道路工事が行われ、雑然とした感じでしたが、それも完了し、今はたいへん綺麗に整備されています。毎日国内外の人たちでごった返しているところを見ると、シンガポール経済の相変わらずの勢いを感じます。物価は日本に較べてそれほど安くはありませんが、海空交通の要地であり、何でもそろうということで、人が集まるのでしょう (図 3)。

チャイナタウンも綺麗になりました。特にピープルズパークコンプレックスの道路を隔てた向かい側は、昔のチャイナタウンの中心で猥雑な繁華街であったのですが、今は街並みが整備され、瀟洒なみやげ物や飲食店が軒を並べて、観光客で賑わっています (図 4)。その他、セントーサ島の対岸にあるワールドトレードセンター付近はまだ開発工事中であり、町の様子はまだ年々変化していると言えます。


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