ドック内の船は盤木でささえられます。新造船ではほとんど問題ないのですが、修繕船においては 1000ton の燃料を積載したままドッキングを希望する船や、塗装の都合で盤木配置が制限される船があります。最近そうした制限事項によって盤木反力が大きくなる船が入渠するというので、船体強度をチェックする機会がありました。このことがきっかけで、船渠係の人から盤木に関する話を聞くことができました。
写真1 盤木の一例[拡大画像] |
盤木の一例を紹介します。写真1に示す盤木は、鉄筋コンクリートと、樫と松の木から成り立っています。盤木とタッチする船体形状に合わせて、硬い樫と柔らかい松を組み合わせて使います。船体が盤木全体とタッチする場合は、松を船体にあてその下に樫を敷きます。船体が盤木の一部分にだけタッチする場合、船体には樫をあて、その下に松を敷くことによりクッション性を保ちます。
当社で使用している盤木の重量はおよそ2〜3.5tonほどで、フォークリフトの爪やワイヤーを鉄筋コンクリート部分にあいている2つの穴に通して移動させます (写真1参照)。一船の盤木をセットするのにかかる時間は、船底がフラットな船であれば 1〜2日ですが、曲がり部が多くかつ精度が要求される船の場合は4〜5日かかることもあります。
写真2 盤木配置を後方から見る[拡大画像] |
当社には修繕で様々な船が入渠しますので、各々の船型にあわせた盤木配置とする必要があります。大型のタンカーやバルカーの場合、船底のフラットな部分にだけ盤木を配置しますが、曲がり部が多い船はほとんどの盤木が曲がり部に配置されます。写真 2 に盤木配置の一例を紹介します。きれいな船型になっていて、まるで船体に優しいベッドのようです。このような曲がり部が多い盤木配置の場合、盤木の高さ調整等の苦労があるようです。
シーチェスト、ボトムプラグ、ソナーなど、盤木が当たってはいけないものには注意が必要です。かなり以前の話ですが、改造で船底に追加設置されたソナーが船渠係に手渡された図面に反映されていなかったために、船体と盤木との間でソナーがサンドイッチになったことがあるそうです。ベッドは体に合ったものでないといけないように、体の状況 (船体の状況) は正しく伝えないと怪我につながります。
船がドッキングする時のことだけを考えれば、船底は出来るだけフラットが好ましいと言えます。子供のころ、「宇宙戦艦ヤマトの船体が船底まで丸くカッコいいのに、戦艦大和の船底はなぜこんなにも平べったいのだろう?」と考えていましたが、もしも宇宙戦艦ヤマトが入渠するときは、船渠係はとても苦労することでしょうね。
滝口信次
佐世保重工業(株) 造船設計部 船殻設計課 構造設計 |