多くの島々を抱え、北海道に続き 2 番目に海岸線延長の長い長崎県には、北から南まで数多くの漁港があります。長崎県北部の松浦市にある調川 (つきのかわ) 港は、西日本でも有数の遠洋まき網漁業の水揚げ基地として発展し、現在では、加工から流通までの物流ネットワークをめざして整備されている港です。ここでは、この調川港の整備事業の一つで、当社が携わった調川浮桟橋の特徴を紹介します。
本浮桟橋のタイプは、RC ハイブリッド浮桟橋といいます。RC (鉄筋コンクリート) と鋼板の強度を合成した断面構造となっています。また、コンクリートを使用することで、耐食性の面でもメリットがあります。
本浮桟橋の大きさは、幅 25m、長さ 70m と浮桟橋としては大型で、杭式の係留装置にかかる荷重が大きく、その分費用が嵩みます。そこで、浮体重量を軽くし、浮体高さを低くするため、一般的なものに比べ比重が 65% 程度の超軽量コンクリートを当社として初めて採用しました。
超軽量コンクリートの軽さの秘密は、使用する骨材の軽さにあります。3 種類の人工軽量骨材を、量の調整をしながら配合することで、強度が十分で軽いコンクリートが出来ます。コンクリートが軽くなることによるメリットはたくさんありますが、ポンプ車による圧送が行えない、骨材が軽いため締め固めが難しい、軽い骨材が表面に浮揚し仕上げが難しいなど、施工の面での問題があるため、模型を作り、打設試験により施工方法の確認を行い、実際のコンクリート打設を無事終了することが出来ました。
調川港浮桟橋は、平成 19 年の 10 月に係留装置の工事も終わり、その年末に無事供用開始を迎えています。全国各地に出回る長崎県産の魚の水揚げ場、魚釣りの場、またカモメの安らぐ場所として今後活躍していくことでしょう。
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RCハイブリッド浮桟橋概念図[拡大画像]

使用した人工軽量骨材[拡大画像]

打設試験用模型[拡大画像]

完成した調川港浮桟橋[拡大画像]
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室園英司
(株)大島造船所 鉄構部 鉄構設計課
橋梁・鋼構造物 |