当社には短期海外研修制度という教育プログラムがあります。このプログラムの狙いは、「外国企業、研究機関等での調査・研究を通じて、本人の視野を拡大し、本人の総合力の向上を図る」というものであり、研修先の選定や内容の調整、渡航の手続等は研修参加者本人が直接行うことになっています。私はこの教育プログラムを利用して、2008年9月から12月の約3ヶ月間、欧州の4カ国(フィンランド、オランダ、スペイン、フランス)を訪問して研修を行いましたので、滞在した各都市の様子や私生活で経験したことなどを紹介したいと思います。
ヘルシンキ大聖堂 [拡大画像] |
最初の滞在国であるフィンランドでは、ヘルシンキに約1ヶ月間滞在しました。ヘルシンキの街は比較的小さく、滞在中にほとんどの道を歩いて回れる程でした。スーパー等へ行くと、レジでは店員さんがいつもニッコリ笑って「モイ!(またはヘイ!:フィンランド語の軽い挨拶)」と言ってくれました。私もニッコリ笑って「モイ!」と返していました。フィンランドに限らず、欧州では店員と客が挨拶し合うことはごく普通のことのようで、挨拶をしないと非常に無愛想な人と思われるそうです。
ヘルシンキではフロアーボールというスポーツにも挑戦しました。フロアーボールは室内で行うホッケーのような競技で、フィンランドでは寒い冬にでもできるスポーツとして結構人気があるようです。研修先の方々と毎週水曜日にプレイし、プレイ後は皆で一緒にサウナを楽しみました。
フローニンゲンの街 [拡大画像] |
進水式の様子 [拡大画像] |
スペイン広場 [拡大画像] |
凱旋門 [拡大画像] |
オランダでは、フローニンゲンという北部の都市に2週間滞在しました。フローニンゲン大学の近くに滞在していたため、学生が多く、通りや店はいつも学生で賑わっていました。坂が無いため、学生の移動手段は専ら自転車で、自転車専用の道路や信号がありました。私もホテルから自転車を借り、通勤や観光に利用していましたが、初めは交通ルールがわからず、ビクビクしながら走っていました。フローニンゲンの街は運河に囲まれており、運河の内側はテーマパークのような中世の街並み、外側へ少し自転車で走れば地平線まで続く農牧地の風景を楽しむことができました。
また、フローニンゲン滞在中、近くの造船所で行われた進水式を見ることができました。この造船所は内陸部にあり、運河に面しているため、サイド・ローンチング方式での進水を行っていました。船長120m程度の一般貨物船が、勢いよく運河に進水していく様子は、非常に見応えのあるものでした。
スペインではマドリッドに2週間滞在しました。スペインの生活で印象的だったことは、食事についてです。滞在していたホテルの周りには、英語が通じる飲食店が少なく、一人で店に行くときは、どんな料理が出てくるかいつもドキドキしていましたが、出てくる料理はどれも美味しいものばかりでした。但し、一品一品の量が多いため、ついつい食べ過ぎてしまう毎日を送っていました。また、スペインでは、食事をとる時間帯が日本とは異なります。昼食は15時ぐらい、夕食は22時ぐらいが一般的だそうです。しかも、食事にかける時間が長く、研修先の方々と昼食に出掛けると、17時ごろ職場に戻ってくることもありました。その後皆さん普通に仕事を再開していましたが、私は仕事モードへの切り替えに大変苦労しました。
フランスではパリに約1ヶ月間滞在しました。ご存知の通り、パリは非常に華やかな街で、見るもの全てがお洒落に感じました。休日を利用して、有名な観光スポットは一通り回りました。パリ市内の移動はメトロ(地下鉄)が非常に便利ですが、私がお世話になった研修先の周辺にはメトロの駅が無かったため、バスで通勤していました。バスはいつも超満員でしたので、今まで徒歩での通学・通勤の経験しかなかった私にとっては、非常に疲れるものでしたが、バスの窓から見える美しいパリの街並みを楽しむことができました。
滞在した4カ国とも、公用語が英語ではありませんでしたが、基本的に英語でコミュニケーションをとることができました。スペインとフランスでは英語が通じない所が一部ありましたが、フィンランドとオランダではほとんど全ての人が英語を話すことができます。しかし、どの国に行っても最初の何日間かはコミュニケーションに苦労しました。これは、私の英語が未熟であるせいもありますが、文化や生活習慣の違いも大きな要因の一つではないかと考えます。その国での生活にある程度慣れてくると、相手がその状況で何を考えているか、何を言おうとしているか、どういう返事を期待しているか、ということがある程度予測できるようになり、言葉が100%通じなくてもコミュニケーションがとれるようになるのではないかと思います。こういった意味で、今回欧州4カ国の生活・文化に触れることができたことは、大変貴重な経験になったと思います。今後もこの経験を活かせるように頑張っていきたいと思います。
高比良健一 三菱重工業(株)下関造船所 船舶・海洋部船殻設計課 船殻設計 |