チビタベッキア駅 [拡大画像] |
今回の出張は、欧州のフェリーに乗船することが主目的であったため、空港のある主要都市から離れた港まで、地下鉄、鉄道、航空機と様々な交通機関を利用しての移動が必要であり、英会話に自信のない私にとっては、旅行雑誌等にも載っていない地へ無事に辿り着くことが出来るかとても不安な気持ちで出発した。
欧州到着後の初日は、フィウミチーノ空港(イタリア)からローマ・テルミニ駅を経由しローマの北西に位置するチビタベッキア駅まで鉄道で約1時間の移動。海外で初めての列車利用だったため、かなり時間に余裕を持ってテルミニ駅へ向かった。駅構内は広く、案内表示や乗車手続き(切符購入や改札)に手間取り、結局、ホームを全力疾走するはめになったが、何とか列車に間に合った。
チビタベッキア駅からフェリーターミナルまでは、出航時間に合わせて専用バスが運行されているが、一般旅客の乗船時間より早く乗船して荷役作業の様子を調査するため、徒歩にて約40分移動した。日本国内のフェリーも同様ではあるが、他の交通機関からフェリーターミナル間の交通の便が悪く、自家用車以外での利用は時間の融通がきかない。利用客数の関係もあり、大幅な改善は難しいと思うが、ターミナル付近に乗船者以外の人が集まる場(例えば、水族館や大型ショッピングモール)を設ける等の改善を行えば、交通機関も改善され、集客率向上にもつながるのではないかと考える。今回乗船した時期は、閑散期であったこともあり、ターミナル付近にも殆ど人がいない状況であったが、繁忙期の6〜9月には、ほぼ満船(旅客定員2,100人)となるらしい。
乗船したフェリー(チビタベッキア〜バルセロナ間に就航)は、航海時間21時間で旅客定員2,100人の大型フェリーと言うこともあり、公室諸設備は充実していた。特に食に関しては、様々な食事の取り方を選べるよう、オーダー式のレストラン、カフェテリア式のレストラン、バー、ラウンジが配置されている。航海中は、船内調査を目的に各公室を利用することを考えていたが、本船航路の略中間地点に、冬季にはかなり荒れる海域(ライオン湾)があり、乗船時も、スラミングを起こすほどピッチングし、フィンスタビライザーが利かないほどローリングしており、航海のほとんどをベッドで過ごすことになった。
大雪のマドリッド空港 [拡大画像] |
最初の目的であった、チビタベッキア〜バルセロナ間のフェリーへの乗船を無事に終えることが出来たことで、次の目的地であるカナリア諸島(スペイン)ラパルマ島への移動を楽しもうと思えるほど不安な気持ちも薄れていた。カナリア諸島では高速フェリーの乗船調査を行う予定だ。
ところが、この移動が今回の出張で最大の難関となった。ラパルマ島へは、飛行機にてバルセロナからマドリッドに移動し、翌日のフライトでラパルマ島に到着する予定であった。しかし、マドリッド空港でいくら待ってもスーツケースが出てこない。航空会社に確認すると、バルセロナでのチェックイン時に航空会社の手違いでスーツケースをラパルマ島まで一気に運ぶ手続きとなっていた。初めてロストバゲッジを経験した。航空会社との交渉に大変苦労したが、幸いにもスーツケースは、2時間程度で手元に戻ってきた。初めての経験で本当に疲れ果てた。
あくる日、外を見ると、ホテルに面した通りがうっすらと白くなる程度の雪が積もっていた。この時点ではフライトに影響するほどではないと楽観的に考えていたが、空港に向うバスを待つ約20分の間に、雪は降り続きあっと言う間に10センチの積雪。バスでの移動中も雪は降り続き、空港に着くと既に空港は麻痺状態。電光掲示板には、私が搭乗する飛行機は「1時間遅れの出発」と表示されており、搭乗機はスタンバイ状態。待合所にて1時間待機した。1時間後、さらに1時間の遅れと再表示。このようなことを何回か繰り返し12時間が経った頃突然「欠航」の表示。表示板の前で愕然とした。しかし、直ぐにスケジュールの見直し、航空券、乗船券の変更、ホテルの変更・再手配など、行わなければならないことが沢山あることに気づき、無我夢中であちらこちらへ変更手続きを行った。こんなことならば、欠航が決まる前にさっさと変更手続きを始めればよかったと悔やまれた。また、初めてのEチケット利用であったため、変更手続きの仕方が分からず手間取ったが、身をもって学ぶことができた。
結局、フライトスケジュールの都合もあり、マドリッドに2日間の足止めとなったが、何とかラパルマ島へ到着した。ラパルマ島のあるカナリア諸島は、ヨーロッパ人の避寒地として人気の観光地であり、年間を通じて約1,000万人もの観光客が訪れるため、観光産業が発達している。今回乗船した高速フェリーも、ティネリフェ島(カナリア諸島の主島)〜ラパルマ島を1日1往復、ティネリフェ島〜ラゴメラ島を1日3往復しており、諸島内の日帰り観光ツアー客の利用が多い。また、主島であるティネリフェ島から各島への物資運搬としての利用も多い。荷役時間については、1日4回の航海を可能とするために、岸壁から3基の可動橋を同時に架設可能とし、3レーン同時荷役を行っていた。また、スペインのルールでは、条件を満たせば車両を固縛する必要がなく、これが荷役時間の短縮となっている。
全ての目的を何とか達成させた後、帰国のためフィウミチーノ空港への移動を開始したが、ここでも航空会社の突然のスモールストライキにより、他の航空会社への変更が発生。マドリッドでの経験を活かし、今回は早めに対応したこともありなんとか当日中にフィウミチーノ空港まで辿り着くことができた。さらに、最後の国際便であった日本へのフライトも出発時間が遅れるとのアナウンス。トラブルに慣れてしまった私は、余裕綽々に免税店でウィンドーショッピングを楽しんでいたら、急に搭乗が開始されたため場内アナウンスで呼び出しされてしまい何とも情けない結末となった。
今回の出張では、海外フェリーに乗船することで自分自身の見聞を広められたことは勿論ですが、海外でのトラブル発生時の対処方法など、普段の会社生活では経験出来ない多くのことを学ぶことが出来た。また、英会話の必要性を改めて痛感したため、今後は英会話の習得に力を入れていきたいと思う。
中村俊介 三菱重工業(株)下関造船所 船舶・海洋部船装設計課 船舶居住区内装設計 |