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250Tクレーン

佐世保重工業(株)造船設計部 酒井哲也
弓張展望台から見る 250Tクレーン
弓張展望台から見る 250Tクレーン
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造船所内に入ると大小様々なクレーンが目に付きます。その中でもひときわ目を引くクレーンが立神係船池に設置されている250Tクレーンです。このクレーンは大きいだけでなく、とても歴史があるクレーンなのです。大正2年10月完成で、その歳はなんと96歳!! 今回はこの250Tクレーンについてご紹介します。

この250Tクレーンは旧佐世保海軍工廠時代から使用されているもので、もともとは艦船の改造や修理のために設置されました。英国のサー・ウィリアム・アロー社製で、戦時中は大艦の砲身や機関を吊り上げるなど大活躍しましたが、戦後はSSKの一員として商船建造に関わってきました。

リベットで造られた柱
リベットで造られた柱
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操作室内部 1
操作室内部 1
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操作室内部 2
操作室内部 2
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操作室内部 3
操作室内部 3
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現在の250Tクレーン
現在の250Tクレーン
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職場に来れば毎日目にする250Tクレーンですが、実は上ったことがありませんでした。「記事を書くのにそれでは駄目だ!」と思い、今回初めて上ってみました。見学当日、まずは外観のチェック。半年ほど前に行われた "化粧直し" と呼ばれる補修工事のおかげで、見た目では年齢を感じさせないほど綺麗になっています。「意外ときれいだな」と思ったのですが、実際に上ってみてその考えは一変するのでした。

まずクレーンの中に一歩足を踏み入れると違和感を感じます。柱に無数にある突起物、何だか分かりますか?そう、このクレーンは今ではあまり見ることのないリベット構造なのです。溶接が当たり前になった現在、リベットで造られたこんな巨大な構造物がまだ現役で動いているなんてすごいと思いませんか!96歳という歴史を感じます。

さらに操作室に入り、その思いはますます強まります。室内は錆がひどく、雨漏り対策のためにタオルが敷いてありました。また操作設備もメインスイッチと数本のレバーがあるだけ。 なんとシンプルな造りでしょう。レバーを引けば天井にあるシャフトが回り、クレーンが動くという単純明快な構造です。まさに "Simple is the best!!" という言葉そのものです。

このクレーンには電子制御という言葉などは一切なく、目視による確認がとても重要になるので、作業者の力量が試されるシビアな機械だそうです。しかし、今の電子制御されたクレーンと違い、多少の無理がきくという人間らしい部分を持ち合わせています。 こんな簡単な造りでありながら、設置から100年近く経った今でも現役で重量物を吊り上げるというのですから、驚きです。

操作室を後にし、さらにクレーン上部に向かいます。操作室から上方へは関係者でも一部の人しか行くことがないらしく、入り口はロープで固縛してありました。高い所が苦手な私は恐る恐る階段を上り、クレーンの可動部がある地上約50m地点に辿り着きました。そこではクレーン可動部が旋回ギアの上を転がり、梁が旋回する様子を確認できました。しばらくクレーンが動く様子を観察し、高さにも慣れてきた頃に周りの景色を見渡して気付きました。ここは造船所内を一望できる隠れた名所だと。思わず「クレーンは100年近くこの場所から会社の変遷を眺めてきたのかな」とか考えてしまいます。

今回、実際に250Tクレーンに上ってみて、今まで持っていたイメージと違う姿を見ることができました。設備の老朽化はありますが、設置より100年近く経った現在でも250Tクレーンはまだまだ現役です。なぜならクレーンに関わる方皆が愛着を持ち、大事に使用してきたからこそ現役を続けることができたのだと思います。そのような先輩達の思いが詰まったクレーンなので、大事に使用して今後もSSKの一員として一緒に頑張っていきたいと思います。



酒井哲也
佐世保重工業(株)造船設計部

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