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"環境に優しい船" の開発について (後編)

長崎総合科学大学工学部船舶工学科 中尾浩一

4 環境にやさしい船舶

環境対策としては太陽光や風力の利用が注目されている。

4-1 ソーラーシップの可能性

  • 太陽エネルギーはエネルギー密度が小さく、船舶で利用できる太陽光エネルギーだけでは船舶が必要とする動力の数パーセント程度しか得られないので大型化は困難。(一部の低速船を除いて "ソーラーシップ" は基本的に成立たない。)
  • ソーラーパネルによる電力を室内電力として使用できる可能性は大である。
  • 低速の小型プレジャ―ボートの新商品化の可能性はある。また太陽光と風力再生可能エネルギーと組み合わせた "ハイブリッドボート" として可能性はある。
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4-2 帆船の見直し

    帆船は近代船舶にも応用され、機帆装化は省エネルギーだけでなく航行性能も改善されて船の稼働率が向上。(帆走客船、帆走汽船、マグナス効果船他)

4-3 内燃機関の改良

    内燃機関の環境対策としてNOxやCO2排出量の少ないエンジンの開発が必要。

4-4 電気推進船

    一般的な電気推進船は内燃機関で発電した電力で推進しているが環境対策を主目的としたわけではなく電気推進による船内区画の有効利用や静粛性、主機関の効率的な運転による燃費向上などが主目的である。"再生エネルギー" による商用電源を利用する電気推進船は充分可能性がある。

    4-4-1 ディーゼル電気推進

    内燃機関駆動発電機の電力で電動モーターを駆動し推進する方式で大型船ではすでに実用化している。(シングルタイプ電気推進、デュアルタイプ電気推進)

    4-4-2 バッテリー電気推進

    搭載したバッテリーで推進する船舶であるがバッテリー重量が重く、また充電時間が長いので実用性が低く、一部の小型船舶に利用されているだけである。

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    4-4-3 ハイブリッド推進

    主電源はソーラーパネルでバッテリーへ充電された電力とディーゼルエンジン発電である。電動モーターの出力はギヤボックスを介してプロペラへ伝達され、マネージメントシステムはソーラーパネルとディーゼルエンジン発動機の電力を最も効率のよい状態に制御している。このハイブリッド推進システムは小型から大型船舶へ対応可能である。

4-5 ハイブリッドシップおよびハイブリッドボートについて

    船舶のハイブリッド化 (化石燃料の消費を少しでも減らす) は現実的な対策である。ハイブリッド技術導入は係留時間が長い遊覧船や近距離旅客船およびプレジャーボートの可能性の方が高く自動車用ハイブリッド技術をマリン用に応用することも可能である。

  • 船舶用ハイブリッド技術の課題
    (主機関の電気推進化、内燃機関の改良、SOLAR-WIND SAILの開発、マルチハル船型の開発、電気蓄積技術の開発、居住区等へ“再生可能エネルギー“を利用、電気モーターシステム重量の低減、モーター出力特性の改善、低価格バッテリー、電気艤装品の安全対策、太陽光発電パネルの開発)

5 産官学によるハイブリッドシップの開発

長崎県では、長崎総合科学大学が提案する "環境に優しい船" を目指して産官学が協力して開発中である。電気推進船に改良したハウステンボスの50人乗りキャナルクルーザーは、限定された水路内ではあるが太陽光のみでも運航可能であることを確認し、船舶検査にも合格し、いよいよ実用化を目指している。また同時期に開発した無免許で乗れる "電動ボート" も基本性能を確認し、実用化を目指している。

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5-1 電気推進キャナルクルーザー

    従来のシステム
    従来のシステム
     
    提案(ハイブリットタイプ)
    提案(ハイブリットタイプ)

    環境に配慮した施設でもあるハウステンボスは、現在23隻のキャナルクルーザーを運航しており、残りのキャナルクルーザーも最小コストで電気推進化を進めるには、完全な電気推進船よりも現状のキャナルクルーザーを最小限で改造したハイブリッドシップが望ましい。

    5-1-1 実用艇への提案

    従来のキャナルクルーザーは、推進用ディーゼルエンジン (24PS-18KW) 2基と室内用エアコンの動力として20KWディーゼル発電機を装備している。試験艇で推進性能を確認した結果、推進モーターは5KWで十分なことが判った。そこで、エアコンの能力不足を損なわない範囲で居住区用の発電機から推進用の動力を賄うことができれば、最小コストで電気推進化は可能である。

5-2 3.3m電動ボートの開発

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    走行性能の確認は終わったが、最小コストで実用化を図るには、市販の電装品を使用するのが望ましいので、今後は耐久性や信頼性の確認が必要である。

  • ソーラーパネル 天候による充電特性を実験中。
  • 太陽光発電を最適動作点で効率的に充電するコントローラーを試験中。
  • 電動船外機の性能確認とディープサイクルバッテリーの充放電特性試験
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6 今後の展望

近年、環境技術がビジネスとして注目をあびるようになったが、5年前から "環境に優しい船" をテーマに情報収集から始まった長崎県内の産官学のプロジェクトも、試験船による貴重なデータと経験を得ることができた。今後は、いよいよ長崎県を船舶に関する環境技術の発信地としてコストを重視した開発に力を注ぎたいと考えている。



中尾浩一
長崎総合科学大学工学部船舶工学科准教授
海洋環境・舟艇デザイン

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