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92,000DWTバルクキャリアサービスエンジニア乗船記

(株)名村造船所基本設計部船殻設計課 日本貴秀一
出港する本船
出港する本船
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ニューキャッスル港 入り口
ニューキャッスル港 入り口
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冬の北陸 朝景色
冬の北陸 朝景色
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クルーと共に (筆者 前列中央)
クルーと共に (筆者 前列中央)
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2010年12月15日から2011年2月7日までの間、92,000DWT型バルクキャリア "REIYO" にサービスエンジニアとして乗船する機会を得ました。乗船の目的は、初期不具合を解決に導けるよう、本船と当社の間に立って正確な情報の受け渡しをするというものでした。ここでは、乗船経験を通じて感じたことを、寄港地情報等と合わせてご紹介致します。

航路は日本とオーストラリアの往復で、片道約2週間の航海でしたが、今回は沖待ち期間が長く、往復で約2ヶ月の乗船となりました。

今回の積み地であるニューキャッスルは、石炭の輸出港として繁栄してきた都市で、常時何隻もの船が沖待ちをしています。2007年に暴風によって一隻のバルクキャリアの座礁事故が発生した事により、現在は安全対策として、荷役開始予定時刻より48時間前以上のアンカリングが禁止されています。本船は到着前に11日間のドリフティングを実施しましたが、それはこのルールを守るためです。

本船は到着から2日後に入港する予定でしたが、港からのキャンセルの連絡が何度もあり、結局はまた11日間も待たされました。これでは安全対策の意味が無いような気もしますが・・・。

そういう事で、待ちに待ったニューキャッスル港の入り口の風景は一段と美しく感じられました。この港は荷役効率が良く、かつ24時間体制で石炭の積み出しをしています。そのため荷役はたった14時間半で終了してしまい、クルー全員が徹夜での作業となりました。あれだけ待った割には上陸もままならず、すぐの再出港となったことに悲しんだのは、筆者だけでなくクルーも一緒だったはずです。

揚げ地は、石川県七尾港の北陸電力株式会社殿の火力発電所でした。真夏のオーストラリアから、雪の世界に一気に移動して、寒さが本当に厳しく感じました。

着岸後、本船の初入港記念パーティが行われ、筆者も参加させて頂きました。そこで北陸電力の方にお話を伺う機会がありましたので、本船が約2ヶ月かけて運んできた石炭で、どれくらいの期間発電できるのか聞いてみました。漠然と乗船期間と同じ2ヶ月くらいは持つのではないかと予想していましたが、答えはなんと最短でたった一週間程度との事でした。季節によって電力需要は変化するとは思いますが、石炭というものが日本の電力に対してとても重要であることが分かります。調べてみたところ、日本の石炭輸入量は、世界第一位だそうです。電力の安定供給のために、不具合の無い船の建造とアフターサービスを担う造船所の役割の大きさを、改めて実感することができました。

この約2ヶ月の乗船を通して、多くのことを学ばせて頂き、これらのことを今後の設計業務に活かしていきたいと思います。

最後になりましたが、このような機会を与えてくださった船主殿と関係者の皆様に対し、深く感謝申し上げます。



日本貴秀一
(株)名村造船所基本設計部船殻設計課
構造設計

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