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思い出を届けるバンドマン

佐世保重工業(株)造船設計部電装設計課 辻 佳太

アメリカから伝来したのは『ハンバーガー』だけじゃない!! 実は音楽もアメリカ人と共に佐世保にやってきたのでした。佐世保の街にはJAZZ BARやJAZZ音楽祭などJAZZに縁のあるものが数多くあります。なぜ、JAZZなのでしょうか?これにはちゃんと理由があるのです。

終戦当時日本で流れている音楽といえば軍歌や演歌のようなものでした。そのときアメリカで流行していたのは『JAZZ』でした。JAZZというと、"大人の音楽"、"おしゃれな店のBGM" といった敷居が高い感じがしますが、現在巷に溢れているさまざまなジャンルの音楽達も紐解いていけば『JAZZ』から発展したものです。もちろん、当時は最先端の音楽として若者たちの間で流行っていました。当時の日本人にとっては、180°違ったノリの音楽がやってきたわけです。今回のJAZZの話は、戦時中SSKで学徒動員として働き、戦後はバンドマンとして働いていた方から、当時の様子を伺いました。

第二次世界大戦に敗れた日本はアメリカの支配下に置かれ、軍港であった佐世保にも米軍基地が置かれました。戦後は働く場所もほとんど無く、その貴重な勤め先のひとつとして米軍基地がありました。現在のSSKがある場所も米軍基地となり、その名残として今もなおSSKの隣には米軍基地があります。

基地内には、飲食店、スーパー、ホテル等様々な施設がそろっていて、娯楽施設としてアメリカ人専用BARがありました。もちろんカラオケなどない時代なので、店内に流れるBGMは全て生演奏です。その為、"バンドマン" という職業があり、基地内に約200人ものプロのバンドマンがいました。その店のムードを左右する重要なポジションなので、チーフによる採用テストは厳しく、その上採用されたとしても各バンド毎にA、 B、 C とランク分けされ、その技量によって稼ぎが異なります。

一見華やかな職業のように見えますが、バンドマン達はより高い評価を得られるよう、日々その技術の向上に余念がありませんでした。そして大きな壁となったのが、演奏する曲でした。それこそが、『JAZZ』でした。初めて聞くメロディ、全く違うリズム、レコードもまだ普及していなかった為、譜面や外国人プレーヤーの演奏しか頼りにするものがなく、まさに手探りで音楽を吸収していくしかありませんでした。更に、予定している曲だけでなく、出来るだけリクエストに応えていくために、その一瞬一瞬が気の抜けない毎日でした。しかし、このようなバンドマンの努力のおかげで、佐世保にJAZZが浸透していきました。

時は流れ、日本が高度成長期になると、繁華街にはキャバレー等が立ち並び、今までBARで活動していた "バンドマン" 達は、日本のサラリーマンの癒しとして活躍するようになりました。時代に合わせて演奏する音楽も日本人向けの歌謡曲に変わっていったものの、その中でも必ずJAZZのリクエストはあったそうです。時代は変わっても、佐世保の人々の中に聞きなれた懐かしい音楽として心の中に残っていたからでしょう。そして、1980年代に入り音楽プレーヤーやカラオケが浸透していくと、徐々に "バンドマン" の活動の場が失われていきました。このような経緯をへて現在に至るのですが、今でも佐世保の街に『JAZZ』に関するものが数多くあるのは、このような歴史があったからです。

今回取材に応じてくれた方は、現在ボランティアで老人養護施設の慰問をして、当時を知る方々に思い出を届ける活動をされています。かく言う私も演奏が趣味で、その活動に参加しています。一番心に残っているのは、御歳90歳のご婦人から "Danny Boy"というJAZZのリクエストを受けたときのことです。私たちの演奏を聴いて、若い頃を思い出したと少女のような笑顔で喜んでもらえたことがとても嬉しく、当時の人達にとってJAZZがどれほど印象的なものであったかを知ることが出来ました。

私もJAZZを演奏してみて、その魅力に取り付かれた一人です。私が魅力に感じているところは、なんといっても自由なところです。どのジャンルの音楽でも共通して言えることですが、演奏者が曲をどう表現するか、ということをJAZZでは特に重要視しています。その為、同じ曲でもその時々によって形を変える為、飽きが来ません。こういうところが、JAZZが人々に長く愛されている理由と思います。

最後になりますが、お話をしてくださった "バンドマン" の方は、なんと御歳81歳!! 未だ衰えぬテナーサックスの音色は、佐世保の歴史を奏でながら、今も人々の心に響いています。



辻 佳太
佐世保重工業(株)造船設計部電装設計課
電装設計

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