世界的に温室効果ガス削減が喫緊の課題となっています。筆者らは、陸上のクロスヘッド型試験機関において、それぞれ約0.5%および約0.8%の燃費向上率を示す省燃費型シリンダ油およびシステム油を開発し1)、今回、省燃費型シリンダ油について実船による燃費向上効果について検証を行いましたので紹介します。
日本と豪州を往復する弊社グループ所有のバルクキャリアを用い、現行シリンダ油 (現行Marine Cylinder Lubricant : 以下MCL) および省燃費型シリンダ油 (省燃費MCL) の実船試験を実施しました (表1参照)。試験においては主機関の全気筒に圧力センサを装着し、燃焼解析装置により図示出力を算出、軸出力と図示出力の比である機械効率により効果の評価を行いました。
表1 実船試験の概要
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海象の影響を確認するために、計測データのうち風速が小さく、船体動揺が少ない凪状態を抽出し機械効率の比較を実施した所、現行MCLの機械効率の平均は0.9400 (156h)、省燃費MCLの平均は0.9475 (114h) となり、0.79%の効率向上が認められました。
図1 省燃費MCLと現行MCLの1h機械効率 [拡大画像] |
図2 シリンダドリップ油中Fe分の推移 [拡大画像] |
ただ、凪状態だけの解析では、(1)効率向上に比較しバラツキが大きい、(2)風力と船体動態のみにより抽出しているので同じ状態を抽出しているとは言いきれない、また、(3)抽出条件を厳密にするとデータ数が少なくなるため、現行油と省燃費油の比較には不適と考え、凪状態だけではなく主機関が稼動している全ての状態を試験期間とした解析も実施しました。このとき、機械効率は1h毎の平均値を1データとして使用しました。
結果は図1の通り、現行MCLの1h機械効率の総平均が0.9431であるのに対し省燃費MCLは0.9486となり、向上率は約0.6%であることを確認しました。尚、省燃費MCL試験前後の現行MCLの結果はほぼ等しく、図中のIバーで示す標準偏差から見ても有意な比較となりました。
また、信頼性の評価として、現行MCLおよび省燃費MCL使用によるシリンダライナ磨耗への影響度合いを確認しました。磨耗度合いはシリンダ内面の潤滑を終えたシリンダ油 (シリンダドリップ油) を抽出し、この中に含まれる鉄分値Fe分を比較する方法を取りました。その結果、図2の通り、省燃費MCL使用時にFe分が増加することはなく摩耗には影響がないことが確認されました。
同様に、省燃費MCL使用前後でカーボンやカルシウムといったピストン堆積物の増加は認められず、清浄性にも影響がないことも確認されました。
以上より、省燃費型シリンダ油の燃費向上効果について実船にて検証を実施し、以下の事項を確認しました。
1) S. Takeshima, et al., Proceedings of ISME KOBE 2011, (2011-10), D1-1
山本弘行 常石造船(株)商品企画部総合設計グループ 開発・設計 |
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竹島茂樹 JX日鉱日石エネルギー(株)中央技術研究所潤滑油研究所エンジン油G 潤滑油研究・開発 |