2012年4月10日、S.No.581 M/V LA BAMBAは多くの人々に見守られながら竣工しました。本船は、当社建造37,000DWT BOX SHAPED BULKERの第2番船であり、本船の各種調査や乗組員からの意見聴取のため、約2ヶ月間の予定で乗船しました。
尾道造船出港後の本船 [拡大画像] |
上海での深夜荷役 [拡大画像] |
オーストラリアへ向けて太平洋航行 [拡大画像] |
本船は、尾道造船を出港後、来島海峡、関門海峡を経て最初の荷役地となる上海に向けて航行しました。尾道から上海までは約1日と20時間で到着します。ここでは、入港待ちのため1日だけ錨泊することになりましたが、レーダーには夥しい数の船影が映し出されており、沖待ちの船舶でごった返していました。この船舶の数の多さに圧倒されると共に、中国市場の大きさを垣間見ることになりました。
上海では、スチールパイプを積み込むことになり、荷役作業は6日間で昼夜問わず24時間体制で行われました。荷役作業は大きな問題も起こらず終了し、荷揚げ地となるオーストラリアのブリスベンに向かいました。
本船は、太平洋を南下し、赤道を超え南半球に入りましたが、この時期のオーストラリアは秋に入ったばかりで少し肌寒い気候でした。上海からオーストラリアまで14日間かけて航行した本船は、また沖待ちとなり、大きなうねりのなか心地よく揺れながら錨泊し、翌日ブリスベンに入港しました。岸壁にはスチールパイプを運ぶ大型トレーラーが長蛇の列を成して、本船の荷役を待っていました。ここでも荷役作業は24時間体制で行われ、計8日間で荷役は終了しました。
本船は、その後ブリスベンから約400km北側のグラッドストーンに向けて航行しました。航行時間は25時間でしたが、驚くことに沖合には18隻の船舶が沖待ちの為にアンカーを降ろしており、本船もここで6日間の錨泊の後、入港となりました。グラッドストーンでの積荷はアルミナで、コンベアによって昼夜問わず運ばれてくるため荷役作業は3日間で終了しました。本船は、その後、タスマニア島にあるベルベイに向かうことになっていましたが、私はこのグラッドストーンで下船し、帰国となりました。
本船の乗組員は、フィリピン人22名であり、陽気で明るく、いつも笑顔で私に接してくれました。何をするにも和気あいあいとしており、乗船中、楽しく過ごすことができました。本船でトラブルが起これば、調査して会社に報告することにしていましたが、その間の応急処置や修理、原因究明に至るまで全て彼らと共に行うことで信頼関係も深まっていきました。
乗船中は、これまで気付かなかったことや考えてもみなかったことが続々と浮かび上がり、船内各所の使い勝手や機器の配置、建造時の注意すべき所など、これまでとは違う角度で見ることができ、新たな発見をすることができました。造船所と船主の両者二つの天秤が釣り合ってこそ、良い船は完成するのだと改めて気付くことができました。また、乗組員から多くの貴重な意見を収集することができ、今後の造船マン人生の糧になると思います。
結果的には43日間の乗船でしたが、普段の生活では経験できないことを沢山経験することができ本当に良かったと思います。この貴重な経験を基にこれからもより良い船造りに励んで行きたいと思います。
入舩憲一 尾道造船(株)造船設計部船装設計課 造船設計 |