図1 MTS敷地内の実験水槽建屋 [拡大画像] |
2011年10月から2012年8月上旬まで、ノルウェー研究財団 (Research Council of Norway) からいただいた若手研究者のための奨学金をもとに、ノルウェー科学技術大学 (Norwegian University of Science and Technology : NTNU) の海洋技術センター (Marine Technology Center : MTS) に訪問する機会を得ました。NTNUは、オスロから飛行機で約1時間のノルウェー中部の街トロンハイムに位置しています。これまでにも複数の日本人研究者が在籍していた研究施設であり、船舶海洋工学分野の研究者や技術者にとっては馴染み深い場所と思われます。図1は、MTS近くの展望タワーから撮影した実験水槽建屋です。写真上部はフィヨルドであり眺めの良い場所でした。
現在、MTS内には船舶海洋工学に関する重点的な研究課題を集めた研究組織 (Centre for Ship and Ocean Structures : CeSOS) が設置されています。CeSOSは2002年からノルウェーのCoE (Center of Excellence) として設立され、6人の教授を中心として、ヨーロッパだけでなく世界各国から来た客員研究員、博士研究員、博士課程学生約100名が在籍している研究組織です。研究分野は、流体力学、構造力学、流体構造連成問題、破壊・疲労強度評価、制御理論、応用数学などの基礎学問領域から、海洋構造物、石油掘削装置、洋上風力発電設備、海洋発電デバイスなどの応用研究まで船舶海洋工学全般の研究が実施されていました。
図2 NTNUのゲストハウス [拡大画像] |
図3 DNV本社前にて [拡大画像] |
筆者は、これまでに継続して計算力学分野の研究を行ってきました。受け入れ先のTorger Moan教授は、CeSOSのセンター長をしており、プロジェクトの運営、博士課程学生の指導に大忙しの中、時間を作っていただきFEMを用いた最新の船体構造解析に関する議論をしていただきました。また、今回の訪問では船舶海洋工学に関連する新しい研究分野の開拓をしたいと思い、粒子法を用いた流体構造連成解析に関するテーマにも着目しました。
CeSOSには、粒子法研究で世界的に有名な研究者Dr. Colagrossiが在籍していたことがあります。現在でも同グループの研究者が客員教授として在籍しており、粒子法だけでなく最新の流体構造連成問題のトピックについて時間をかけてディスカッションしていただきました。その他、浮体型洋上風力発電設備や波力発電に関する研究、魚網の挙動解析、簡易計算モデルによるライザー管の強度評価など興味深い研究内容も多く、今後の研究活動や国際的な研究ネットワークの礎となる経験となりました。
今回の滞在では、図2のNTNUの短期滞在研究者用ゲストハウスを借りることができました。MTSや市中心部にバスで10分程度とアクセスも良い場所でした。現在、トロンハイムには多くの日本人の方が住んでおり、食事会、クリスマス会、日本語を勉強しているNTNUの学生さんとの交流会などが定期的に開催されていました。滞在当初、慣れない私にとって日本人会の存在は大きく、生活面でのサポートは有難く大変感謝しています。また、滞在先が北欧ということもあり、普段あまり行くことのできないヨーロッパ内での国際学会や会社訪問を行うことができました。図3はオスロのDNV本社前で撮った写真です。
田中智行 広島大学大学院工学研究院機械システム・応用力学部門 計算力学、構造力学、船舶海洋工学 |