当社では、「地元の期待に応え、日本社会の役に立ち、世界からも信頼されるものづくり企業になろう。そうあり続けよう。」という企業理念の下、「地元の期待に応える」活動の一環として、主に市内の小・中学生を対象に、工場見学を実施しています。佐世保の発展を支えている造船業を身近に感じてもらうため、バスに乗車し、造船所構内を一周−当社の象徴であり佐世保のランドマークともいえる250トンクレーン、立神係船池、6つのドックや、世界的にもめずらしいクランクシャフト製作のための鍛造工場などを見学するコースです。
年間約20件の依頼があり、市内の多くの学校に当社や造船業について知ってもらう機会です。私はその担当として見学に同行し、子どもたちに説明を行っています。今回、見学の内容や様子などについて紹介したいと思います。
小学校であれば、工業についての社会科見学の一環として、「地元の基幹産業がどのような仕事をしているのかを学び、親しみ・興味を持つ」「実際に近い距離で大型の新造船やクレーンの大きさを目の当たりにし、体感してもらう」ことに重きを置いています。
子どもたちの反応が良いものは、鍛造加工中のインゴットや、修繕中の護衛艦に搭載されている大砲類、40個のタイヤを持ちブロックを運搬する「320トン台車」などです。巨大なクレーンや機械類が作動する様子を見て、感嘆の声を上げる子どもたちの様子が印象的です。
中学校になると、工業についての学習というよりも、佐世保の歴史学習という側面が強く、当社の登録有形文化財である「250トンクレーン」、「旧佐世保鎮守府武庫預兵器庫」、1895年に竣工された最も古い歴史を持つ第5ドックについて、建造様式や歴史的な出来事から「何故この建物に歴史的な価値があるのか」を中心に説明を行います。
小・中学校ともに共通して子どもたちが一番興味を持つのは「数値」です。例えば、年間の建造隻数、働いている人の人数、ドックの長さ・幅・深さ、などです。それを受けて、説明の際に私たちが工夫していることは、以下のような点です。
見学対象の大半である小学生に理解してもらうためには、「広く浅く、わかりやすく」説明しなければならず、身につけなければならない知識も広い範囲にわたります。しかし、どちらかというと「造船」に関することよりも当社の造船所に関する質問が多く寄せられるので、自分自身の知識もついつい造船所に関する知識に偏ってしまいがちなところもあり、「造船」に関してはまだ勉強不足と感じています。
好奇心旺盛な子どもたちの質問を通じて、私たちも勉強の機会を得ることもあります。例えば、「船は何故浮くのですか」という質問に対して、すんなり回答するのは意外と難しいことです。「お茶碗を水につけると浮くのと同じ」と簡単に説明するものの、見学が終わってから「アルキメデスの原理」について改めて調べたり、見学案内担当者の間で「こんな質問があったけど、どういう説明をすればよかったか」などプチ反省会を行います。
他には「どんな気持ちで働いているのか」「仕事のときに気をつけることは」など、自分自身の仕事への取組み方について質問されることもあり、再認識し反省する機会にもなります。
子どもたちが感想や学習のまとめを送ってくれることもあり、「スケールの大きさに感動した」「また見学したい、もっと詳しく勉強したい」「分かりやすく説明してくれた」などの声に、また頑張ろう、という気持ちになります。私自身ももっと場数を踏んで、日々知識を身につけていくことで、一人でも多くの見学者に造船業の伝統を知ってもらい、ものづくりの面白さに興味を持ってもらえれば、と思います。
![]() 小学生からの感想 [拡大画像] |
![]() 中学生による学習のまとめ [拡大画像] |
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山口正人 佐世保重工業(株)総務部総務課 |
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