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竣工から100年を迎えた250トンクレーン

佐世保重工業(株)海洋設計部船殻設計課 瀧口信次
写真1 大正2年10月20日竣工
写真1 大正2年10月20日竣工
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写真2 英国での水平ジブ部分の立会検査
写真2 英国での水平ジブ部分の立会検査
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写真3 艤装工事中の軽巡洋艦「長良」
写真3 艤装工事中の軽巡洋艦「長良」
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写真4 格納式フィンスタビライザーの船積み作業
写真4 格納式フィンスタビライザー
の船積み作業
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平成25年10月20日、当社佐世保造船所のシンボルであり、佐世保市のランドマークともなっている当社の250トンクレーンが、現役稼動中のまま竣工から100年を迎えました (写真)。

このクレーンは、英国製でグラスゴーにあったサー・ウイリアム・アロル社で製造され、はるばる海を渡って、大正2 (1913) 年10月に、この地に据え付けられたものです (写真2)。製造所であるアロル社は、橋梁や大型クレーン等鉄骨で造る大きな構造物の建設を得意としていたので、ロンドンのテムズ川に架かる有名なタワーブリッジや豪華客船タイタニック号を建造した造船所のガントリークレーン (門型高架起重機) を手がけたことでも知られています。

据付当時の佐世保海軍工廠では、軽巡洋艦を連続建造するため、第二船台には、ガントリークレーンを、そして立神係船池の艤装岸壁にこの250トンクレーンを設置して艤装工事に当たりました (写真3)。

戦後の民営転換で昭和21年10月当社の前身である佐世保船舶工業 (SSK) になってから佐世保重工業に至る今日まで、商船の改造修理や艤装工事、機械部門の重量物の船積みに幅広く活躍しています (写真4)。

250トンクレーンのタイプとしては、国内では、槌型 (ハンマーヘッド型) クレーンと呼ばれているものですが、英国では、構造や機能面から、Giant Cantilever Craneと呼ばれています。当初、同じ時期に横須賀と呉の海軍工廠に同じタイプの200トンクレーンが、設置されましたが、すでに解体撤去されているので、国内で稼動中のものは、三菱重工業長崎造船所の150トンと佐世保重工業250トンの2例だけです。

この貴重なクレーンに対して、平成19年11月には、経済産業省から、近代化産業遺産の認定を受けたのを始め、平成20年3月には、佐世保市を代表する港の景観の大切な要素として、佐世保市より表彰されました。さらに平成25年6月には、文部科学省より、貴重な国民的遺産として、国の登録有形文化財の指定を受けるなど、その存在価値が年々高まっています。


このクレーンを動かす回転式運転室は、4本の固定脚部の下部にあり、操作をするレバー式のスタンドや配電盤も上部旋回部やその後部にある機械室も竣工当時のままです。また、ウエスチングハウス社製旋回用モーターの銘板には、今でも1912年製造の刻印が残っています (写真5、6)。

昨年の10月22日には、250トンクレーンの竣工から100年をお祝いして、英国からもイングランド文化大臣からのメッセージを携えて、英国の歴史保存に関係している博士2名が来日され、当時のままの250トンクレーンを見学して帰国されました。今後のことですが、当分代替の計画もないことから、もうしばらくは、これまで同様に現役のまま活躍してもらう予定です。

  写真5 運転室
写真5 運転室
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  写真6 旋回用モーター銘板,製造番号136004,製造1912年
写真6 旋回用モーター銘板、
製造番号136004、製造1912年
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瀧口信次
佐世保重工業(株)海洋設計部船殻設計課

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