ジャパン マリンユナイテッド(株)有明事業所造船部船殻計画グループ揚重チーム 竹本英生
「的」作り風景 [拡大画像] |
「的」を奪い合う風景 [拡大画像] |
有明海に掲げられた「的」 [拡大画像] |
毎年1月の第3日曜日に長洲町にある四王子神社で開催される「破魔弓祭 (的ばかい)」について紹介します。この祭りは約850年の伝統を誇り、安土・桃山時代に氏子達が御利益・幸福を得ようと、ご神体を安置した円座を奪い合ったことが起源とされています。「的ばかい」の「ばかい」とは「奪い合う・取合う」という意味の方言です。1月の寒い最中に無病息災・家内安全など御利益・幸福を得ようと、締め込み姿の男衆が「的」を巡って激しい争奪戦が繰り広げられます。
奪い合う「的」は長洲町的ばかい保存会のメンバーが中心となり、約700本の手編みの縄 (もち米の藁(=わら)で編んだもの)を渦巻状に編んでいき、麻緒とよばれる紐で締める作業を繰り返しながら、1日かけて作られます。昔は、的の作り方は極秘で、一般者が見ることは厳禁だったそうです。完成された「的」は直径約60cm、重さ6kgになります。
この「的」は的ばかい当日の午前10時より町内にある洲崎神社で献納する神事が行われ、その後四王子神社へ運ばれます。
的ばかいの参加者は午前11時から締め込みを始めます。祭り中に緩まぬよう気合を入れて締め込みを行います。振舞われたお神酒で士気の上がった男衆は、四王子神社へ集結します。最近は日本人に混じり外国の方の参加も見受けられ国際的になってきています。
四王子神社で神事された「的」は、午後1時に締め込み姿の男衆に投与されます。百十数名の参加者が、「まーと!まーと!」の威勢のある掛け声とともに競り合いが始まります。「的」を我先に奪おうと激しいぶつかり合いや祭りを盛り上げようと群衆の上に飛び乗り雄叫びを上げる者がいたりと男衆の肉弾戦となります。真冬とは思えないほどの熱気を放つ男衆には、力水があびせられ、水しぶきは白い水蒸気となって沸きあがり、観客を魅了します。普段は静かな四王子神社もこの時は、男衆の熱気とそれを見に来た観客で大変盛り上がります。
「的」は事前に打ち合わせた心棒とされている精鋭の4人衆で守りますが、群衆の間を割り込み、藁で編んだ「的」を引き千切っていきます。この取った藁は、家に持ち帰り神棚に奉ると無病息災・家内安全のお守りになると言われています。したがって、取った藁は、口いっぱいに咥える者や締め込みに隠すものなど家に持ち帰ろうと必死で格闘します。 約一時間程度境内で競り合い後、鳥居をくぐってそのままの勢いで有明海へ向かっていきます。最後は、有明海に入って参加者全員で「的」を掲げ万歳三唱で終焉を迎えます。
激しく競い合っている間は、寒さも体中の傷も気にはならないのですが、冷たい海に入った後は、一気に体中の傷の痛さと寒さで急激な震えが出てきます。また、その後一週間は、お風呂に入る際に体中の傷の痛みと戦わなくてはなりません。しかしながら、一度この祭りに出ると、終焉後のすっきりした気分と、やり遂げた満足感、これで一年間無病息災・家内安全のご利益が得られると感じられ、毎年出なくてはならないという使命を感じさせられます。私も無理やり出されたのをきっかけに毎年参加している一人です。
「破魔弓祭り(的ばかい)」は全国の裸祭りに比べると規模は小さいですが、長洲町の大切な伝統と歴史を誇る祭事です。参加は町内外を問わず自由に出来ます。ぜひ皆さんも一度参加・見物に来られてはいかがですか。
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