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産学連携の事例紹介 : 常石造船と広島大学との共同研究10周年の歩み

常石造船(株)設計本部商品企画部 施 建剛

2004年6月に共に広島県に位置する常石造船と広島大学が船舶設計や環境保全の技術開発を目的とした包括的研究協力に関する基本契約を締結して以来10年になりました。ここで10年間の歩みと概要について紹介します。

社内成果報告会の様子
社内成果報告会の様子
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双方は包括的な研究協力協定を締結して以来、船の性能、構造、艤装、環境の各分野で精力的に共同研究を進めています。具体的な進め方としては、毎年、4分野における共同研究に関する個別のテーマを造船所のニーズと大学のシーズとして提案し、目的と目標、年間計画及び予算などを精査の上、個別共同研究契約を締結します。各テーマの担当としては大学側が先生方と学生さん、企業側が各担当部署の責任者と担当課員となります。各テーマは、決められた年間計画に沿って定期的に進捗確認を行い、10月には全テーマの中間報告会、4月には社内公開の研究成果報告会を開催されます。

模型船の水槽試験
模型船の水槽試験
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2012年度学会論文賞受賞
2012年度学会論文賞受賞
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研究したテーマは、10年間に延べ57件になります。広島大学の110メートル模型実験水槽をはじめ、風圧抵抗を測定する風洞実験装置やCFDシミュレーション計算ツールなどの実験装置と設備をフル活用します。流体力学や構造力学、海洋など船舶に関連の深い分野を中心に、建築、人間工学など延べ22人の教授陣が、常石造船のスタッフとともに研究活動に参加されています。

研究の成果は、波浪抵抗を少なく燃費向上を実現する船首形状や、風圧抵抗を低減する居住区の隅切り形状や付加物及び省エネ型舵の開発につながりました。そのほかに、トポロジー最適化手法 (最適形状設計手法) を使用して強度を高め安全性に優れる船殻構造なども開発し、常石造船などグループの建造船に順次導入しています。さらに、アンカーチェーンの振動による共振を研究した論文が、日本船舶海洋工学会の2012年度論文賞を受賞するなど、応用技術のみならず海事分野の学術振興にも貢献しています。

近年の船員の労働環境の向上に対する関心の高まりを受けて、居住区内の騒音や空調に関する研究のほか、生産現場における効率的で安全な建造方法など、研究分野を広げて活動を進める計画です。今後も学術研究にとどまらないソリューション型の研究開発を進め、海事産業の技術レベル向上に貢献するとともに船主に魅力的な商品を提供していきます。



施 建剛
常石造船(株)設計本部商品企画部
船舶推進性能

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