広島大学大学院工学研究院エネルギー・環境部門 作野裕司
図1 科学イベントにおける集合写真例 [拡大画像] |
図2 浮力実験の様子 [拡大画像] |
近年、若者の「理科離れ」が深刻化しています。「船舶海洋科学分野」も例外ではありません。このような若者の理科離れを抑制し、海洋への興味を促進する目的で、広島大学では、毎年、小・中学生を対象として、海洋観測用気球を利用した科学イベントを夏休みに実施しています。図1は2012年に開かれたイベントでの集合写真です。
イベントの内容としては、筆者が専門とする「海洋リモートセンシング」の研究で利用している、「カイツーン」(カイト・バルーンの略語) のと呼ばれる気球とその気球にとりつけたカメラを題材として、そのしくみや役割をわかりやすく伝えています。
このイベントは1日かけて行われますが、午前中は、Google earth、サーモグラフィー、3Dメガネ等を使って、空中から地上の様子を撮影する技術を体験します。例えば、ペットボトルに入れた水の中にお湯を注ぐ様子をサーモグラフィーで撮影すると、水の対流の様子がよくわかります。応用として、このようなサーモグラフィーを衛星につけて海を観測したら海流の様子等がよくわかる等の説明をすると、参加者からは「なるほど」と声が上がります。
午後には、気球そのものを教材とした浮力の学習を行います。映画「カール爺さんの空飛ぶ家」を模して、発泡スチロールで作られた小さな家に、参加者が一つずつ風船を取り付けていき、何個で家が浮き上がるかという実験を行います (図2) 。ある一定の浮力が得られると、その小さな家は、参加者の目の前で、上に向かって飛んでいきます。このような体験は、船舶海洋工学分野で極めて重要な「浮力」という概念を、水を空気に置き換える形で、小中学生に興味を持ってもらうねらいがあり、参加者からは毎年、大好評を得ています。
今回紹介したイベントは2008年から2014年まで7年連続で、「学術振興機構 (JST)」の「ひらめき☆ときめきサイエンス」事業として採用されています。毎年20〜40人程度の参加者があり、新聞やテレビにもたびたび取り上げられる等、非常に人気のあるイベントとなっています。今後もこのような地道なイベント活動を通して、若者の理科離れ防止や海洋への興味促進に貢献したいと思っています。なお当イベントの詳細につきましては、以下のホームページでも紹介していますのでご参照ください。
作野裕司 広島大学大学院工学研究院エネルギー・環境部門 リモートセンシング工学 |