ジャパン マリンユナイテッド(株)呉事業所設計部 脊戸富士雄
アトランチコスル造船所 [拡大画像] |
ジャパン マリンユナイテッドは、2012年からブラジルのアトランチコスル造船所(Estaleiro Atlantico Sul、ブラジル・ペルナンブコ州、以下EASと称す)に、生産性向上、納期確保等、工場の運営改善のため技術者を派遣しています。私も、2013年5月から2015年5月までの2年間、EASに赴任し、6月より呉事業所に復帰しましたので、その時のエピソードをいくつか紹介したいと思います。
当初、私は技術支援契約の技術支援要員として赴任しましたが、途中からEASへ出向し、EASの社員となり、EASのラインに所属し仕事をしていました。ブラジルの会社の正規社員という扱いになりましたので、日本ではあまり聞いたことのない特典がいくつかありました。
そのひとつは、クリスマスシーズンに、会社から全従業員に、七面鳥とチキンがプレゼントされるというもの。丸焼き用に加工された冷凍の肉の塊 (というより、鳥そのものなのですが…) が2個、専用のリュックサックに入れて配られるものです。折角なのでもらってみたものの、一人暮らしには持て余す代物で、結局ブラジル人の友人にプレゼントしましたが、大変喜ばれました。従業員が2,000人以上いましたので、会社としては、相当の出費だと思うのですが、ブラジルの企業では当たり前に行われていることのようです。
この「当たり前」という感覚ですが、ブラジル人の「当たり前」と日本人の「当たり前」には色々な部分に相当のギャップがあります。ここで紹介した会社の従業員へのサービスはもちろん、仕事に対する個々人の考え方や、組織としての考え方、客先との関係や契約内容、ブラジルの法律に関わる諸手続き、材料のリードタイム、ミルメーカーと造船所の関係、加工外注業者の状況などなど、業務上も多種多様なところに、日本とブラジルのギャップというものが存在します。日常の生活の中でも、例えば、路線バスは客側が乗る意思を示さない限り、バス停には止まってくれないとか、タクシーに時間を指定して予約しても時間通りに来ることがないなど、日本人の常識から考えると違和感を覚える事例がたくさんあります。
現地スタッフとの集合写真 [拡大画像] |
EASでの我々のミッションは、彼らの生産性を向上させることです。日本の造船所では当たり前にやっていること、やれていることが、現地では必ずしもそうではないものがたくさんあります。単純に、より生産性の高い日本のやり方を彼らのやり方に当てはめることができればよいのですが、ブラジルと日本では、内部環境や外部環境も大きく異なりますし、文化も異なります。こういった様々なギャップを認識した上で、ブラジル人、日本人双方が、お互いのやり方、考え方を理解し、議論しながらブラジルでのベストなやり方を見出していく必要があります。
これを行うためには、彼らのやり方、言い分をしっかり聞くことや、我々のやり方をしっかり伝え、お互いのことを理解しあうことがとても重要です。こういった姿勢については、何も海外での仕事だからという訳ではなく、国内での仕事の上でも、とても大切なことだと思います。しかし、海外であるが故、国内とは異なり、ギャップの大きさから色々苦労が絶えないというのが実態です。いずれにしても、こういった経験ができたことは、自分の今後にとって、とても意義あることであったと思っています。
脊戸富士雄 ジャパン マリンユナイテッド(株)呉事業所設計部 船殻生産設計 |