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海洋エネルギー資源共同研究部門の紹介

九州大学大学院工学研究院海洋エネルギー資源共同研究部門 宇都宮智昭

平成26年4月1日づけで、日本海事協会のご支援のもと、本学に「海洋エネルギー資源共同研究部門」が設置され、小職が担当教員として赴任しました。設置期間は平成28年3月31日までであり、早いもので、あと約3ヶ月を残すのみとなりました。ここでは、本部門の目的や主な活動内容を紹介させていただきます。

経緯と目的[1]

資源小国のわが国ですが、わが国周辺海域には、様々な海洋エネルギー資源が賦存しています。特に、洋上風力エネルギーのポテンシャルは膨大であり、また、メタンハイドレートなどの新たなエネルギー資源の開発も緒についたばかりです。エネルギー資源の大半を海外に頼るわが国にとって、これら海洋エネルギー資源の開発を進めることは、わが国のエネルギー自給率の向上に資するだけでなく、世界の海洋開発マーケットへの参入を果たす上でも、極めて重要な意義を持っています。

海洋エネルギー資源開発を進めるためには、海洋開発に関する豊富な知見・経験と学術的基盤の両立が不可欠です。このため、日本海事協会と本学が組織対応型連携契約を締結の上、「海洋エネルギー資源共同研究部門」を本学工学研究院に設置し、次の二つを研究テーマとして、海洋エネルギー資源開発のための基盤技術に関する研究を強力に推進することとしました。

  • 1) 海洋再生可能エネルギー利用のための基盤技術の開発
  • 2) 深海底エネルギー資源開発のための基盤技術の開発

海洋再生可能エネルギー利用のための基盤技術の開発

図1 浮体式洋上風力発電施設
図1 浮体式洋上風力発電施設
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海洋再生可能エネルギーのうち、本部門では特に、浮体式洋上風力発電の実用化に向けた実証研究の推進を主な活動の柱としてきました。

ひとつは、長崎県五島市椛島沖での浮体式洋上風力発電実証事業 (環境省) です (図1)。本事業では、2MW風車を搭載したスパー型浮体を五島市椛島沖に設置し、電力系統に接続した上で洋上での発電実験を継続的におこない、本技術が成立することを実証するとともに、安全性、電力施設としての信頼性や経済性、また環境や社会への適合性を評価することを目的としています。幸い、大きなトラブルや想定外の事態もなく、地元にも好意をもって受け入れて頂くとともに、発電の方も安定的におこなえてきており、浮体式洋上風力発電の実用化が視野にはいり始めています。

一方で、依然として施設のコストダウンは、浮体式洋上風力発電を実用化する上での最優先課題です。特に、係留システムにおいて30%以上のコスト (施工費含む) がかかっており、大きなコストダウンの余地があります。そこで、小職が代表者となり、「浮体式洋上風力発電施設における係留コストの低減に関する開発・実証」(環境省、平成27年度〜平成29年度) の取組を始めました。

本事業では、アンカーをサクションアンカーとすること、係留ラインに合成繊維索を導入すること、係留チェーンの磨耗量評価手法を確立することで係留チェーンのメンテナンスフリー化につなげること、これらの成果をガイドラインとしてとりまとめ本技術の普及を図り、もって、浮体式洋上風力発電の導入拡大をおこなうこと、を目的としています [2]。

深海底エネルギー資源開発のための基盤技術の開発

わが国の長期目標である、2050年時点での温室効果ガス排出量の80%削減を達成するためには、最大限の需要抑制ならびに再生可能エネルギーの導入を達成してもなお、2億t-CO2/年のCCS (二酸化炭素分離回収・貯留) を実施する必要があるとされています (環境省)。特にわが国では海底下貯留しか事実上選択肢がないことから、深海底エネルギー資源開発と同じ技術体系が必要となりますが、その基盤技術はまだ十分に確立しているとはいえません。

また、CCSはエネルギーコストの上昇をもたらしますので、やはりコストとの兼ね合いで技術的な選択肢を考えていく必要があります。本研究はまだ緒についたばかりですが、今後、ひとつの大きな柱として取り組んでいく所存です。

公開セミナーの実施について

平成28年3月18日午後、九州大学西新プラザにおいて「海洋エネルギー資源開発への取組と今後の展望 (仮題)」と題した公開セミナーを実施予定です。本セミナーでは、本部門の成果報告のほか、ノルウェー理工科大学Torgeir Moan教授による基調講演、また、海洋エネルギー資源開発の第一線で活躍しておられる方々にご登壇いただき、パネルディスカッションをおこないます。詳細は、九州大学のホームページ等を通じてお知らせいたしますので、多数のご来場をお待ちしております。


参考文献



宇都宮智昭 宇都宮智昭
九州大学大学院工学研究院海洋エネルギー資源共同研究部門
海洋エネルギー資源工学

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