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一般向け海洋教育イベント「海と船を知る教室」の紹介

九州大学大学院工学研究院海洋システム工学部門 木村 元

1. はじめに

九州大学の伊都キャンパスでは、毎年5月中旬に「伊都祭」と称し、九大伊都キャンパス周辺の自治会やボランティア団体が主体となって企画に参加する地域密着型のイベントが開催されています。伊都祭では多数の屋台や野菜の即売会なども行われ,多数の来場者を集める大きなイベントの一つとなっています。この伊都祭の企画の一つとして、九州大学工学研究院海洋システム工学部門と本学会共催で、一般向け海洋教育イベント「海と船を知る教室」を実施しています。

本イベントでは、講演会やパネル展示・模型展示・試験水槽への見学ツアーを通じ,海や船について楽しく学ぶほか,参加者体験イベントとしてクラフト船工作および同船の速さを競うコンテストを通じて,理科知識の実践や「ものづくり」の楽しさを体験していただくことを趣旨としています。

本イベントは、本学会の海洋教育推進委員会より海洋教育普及活動事業として予算配分を受け毎年実施されているもので,九州大学伊都キャンパスのイベント「伊都祭」の企画の中でも工学部から唯一参加している大規模企画で、普段一般の方が目にすることがない大学内部の施設や研究に触れられる貴重な機会である上に、誰でも無料で参加できるイベントであることから伊都祭の目玉イベントの一つとなっています。

不特定多数の来場者が当教室以外のイベントへも渡り歩くことが予想されることから、参加者をなるべく拘束しないよう実施会場はオープンなスペースとし、参加者の参加・離脱が容易となるよう配慮している関係上、厳密な参加者数の把握は困難ですが、平成27年5月17日(日) に実施されたイベントでは、工作教室の受付記帳者は323名、バスツアーの受付記帳者は217名でした。重複もあるかもしれませんが合計人数は540名、そのうち小学生以下の参加が248名を占めました。

2. 講演会

写真1 講演会の様子
写真1 講演会の様子
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平成27年度の講演会では、本学の金丸崇助教より「美しい船のかたち」と題し、船に作用する抵抗の種類と特徴、およびこれらを軽減する方法について,基本から最新の取り組みまでスライドや動画を用いた分かりやすい解説がなされました。また、本学の安澤幸隆准教授からは「海洋エネルギーを利用した発電」と題した講演が行われ、海洋の持つエネルギーとはどんなものなのか、そのエネルギーをどうやって電気に変えるのか、その原理と方法について紹介がなされました。

3. 工作コーナー・コンテスト

図1 水の落差を動力とするクラフト船
図1 水の落差を動力とするクラフト船
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図2 水の落差動力船コンテスト規定
図2 水の落差動力船コンテスト規定
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写真2 工作コーナーとコンテストの様子
写真2 工作コーナーとコンテストの様子
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本イベントの目玉の一つであるクラフト船工作教室は、無料で手軽に参加でき、リピータの多い人気のイベントです。発砲スチロールを削って船体を作り、その上にコップの底にストローを刺した「エンジン」を載せれば完成です(図1)。船体やエンジンは耐水性の両面テープで接着するため、極めて手軽に工作可能です。コップに水を注いでストローから流れ出る水の反動を利用して進むため、安全・安価かつクリーンで、小さなお子様でも安心して扱えます。

このクラフト船工作教室と併設で水の落差動力船の性能を競うコンテストを実施しています。簡易水槽で船を走らせ,2mの区間を通過する時間を競います(図2)。普通に作った船なら12秒程度の記録になりますが、船体を削って流線型にしたり動力のコップを高い位置に設置するなどの工夫を行うことで8秒台の記録が続出しました。参加者自身はもちろん、保護者や工作の補助を担当した大学生スタッフらが様々な工夫を凝らす様子が見られ、伊都祭の中でも最も "工学部" らしいイベントとなっています。

平成27年度のクラフト船工作参加者のうち水の落差動力船コンテスト参加者は147名で、記録がリアルタイムに大型液晶モニタで表示された会場では、記録が更新されるたび歓声が上がるなど多いに盛り上がりました。

4. 試験水槽見学バスツアー

写真3 試験水槽の見学ツアーの様子
写真3 試験水槽の見学ツアーの様子
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時刻を決めて参加者を募り、学内バスを借り上げて性能試験水槽見学のツアーを実施しています(写真3)。これも普段目にすることが無い大学の大規模施設を見ることができる貴重な機会であることから、幅広い年齢層に人気のイベントです。

5. 模型・パネル展示

写真4 模型・パネルの展示の様子
写真4 模型・パネルの展示の様子
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本学が所有しているTSL (テクノスーパーライナー) の模型や舶用機関の模型、コンテナ船とタンカーの模型、船底ブロックの紙模型や船舶・海洋について解説したパネルの展示などを行っています(写真4)。特に船舶の模型はもの珍らしさから人目を引き、並べて置いてある縮尺が同じバスの模型と見比べてその大きさに感心したり、船舶について様々な質問や議論をするギャラリーの姿が印象的でした。

6. 謝辞

本事業を開催するにあたりまして,ご協力いただきました関係者およびスタッフの皆様と、貴重な機会と事業資金のご提供をいただきました日本船舶海洋工学会のご厚意に深く感謝の意を表します。


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木村 元 木村 元
九州大学大学院工学研究院海洋システム工学部門
海洋教育・計画・設計・艤装・IT化

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