佐世保重工業(株)設計部船体設計課 大崩光平
試運転中の78,000トン型バルクキャリア [拡大画像] |
当社のパナマックスバルクキャリアシリーズは1988年に竣工した68,000重量トン型に始まり、72,000, 74,000, 75,000, 76,000,78,000重量トンと時代のニーズに合わせて大型化してきました。現在に至るまで100隻以上の建造実績を誇り、当社建造船の中心的な船種として長きにわたり主力船型となっています。
その中でも現行のパナマックスバルクキャリアシリーズである78,000重量トン型は、パナマックスの基本寸法である全長225m、全幅32.2mを守りつつ、従来の76,000重量トン型より載貨重量を2,000トン増やす一方で、燃費を10%以上改善し、CO2の排出量を約15%削減しています。
また、カムサマックスに比べると全長が4m短いため、より多くの港への入港が可能であり、汎用性の高さから使い勝手が良い船型として根強い人気があります。さらに、あえてカムサマックスとしないことでニッチな需要を獲得できる船型でもあります。本稿では、当社建造S827番船78,000重量トンパナマックスバルクキャリアを紹介します。
2013年11月に起工し、2015年4月の進水を経て同年6月に竣工した本船は7つの貨物艙を有し、3大ドライカーゴである石炭、鉄鉱石、穀物類を運搬できる使い勝手の良い船となっています。また貨物艙容積を最大限確保出来るよう設計されており、各貨物の積載に対応できるよう十分な船体強度を有しています。
省エネ対策としては、当社にて開発した船尾付加物の省エネフィン "SS-Fin" を装備しており、推進効率の向上を図っています。またリアクションラダーとラダーバルブを組み合わせた形状の舵を装備し、主機関には電子制御エンジンを採用することでさらなる省エネ効果の向上を図っています。さらに波浪中の燃費悪化を軽減させる船首形状として、後方にわずかなふくらみを持たせたバルバスバウのない独自の形状を開発し、実海域での性能向上を図っています。
また本船は現行のパナマ運河に加え、2016年に開通予定の新パナマ運河も通航可能な要目 (最大船幅、喫水、係船金物等) を満足しており、汎用性に長けた設計となっています。さらに秋田県の能代港への着岸も考慮した仕様となっており、冬の日本海の厳しい海象に耐えうるようユニバーサルフェアリーダおよび16台のホーサドラムを装備しています。
環境にも配慮した設計となっており、フランス船級協会(BV)の環境ガイドラインに沿った仕様とすることで "CLEANSHIP" の付記 (Class Notation) を取得しています。また舶用ガスオイル専用のタンク (Storage Tank および Service Tank) を設置する事で、SOx排出規制海域において低硫黄燃料への切り替えが可能です。
その他の特徴として、船体外板の防汚塗装は塗装寿命を通常より長い5年としており、再塗装に伴う入渠が少なくて済むよう配慮がなされています。さらに、将来のバラスト水処理装置の設置を見据えあらかじめ設置場所を確保しており、設置に伴う工事が最小限で済むような設計となっています。
本船の主要目は以下の通りです。
主要目 | ||||||||||||||
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大崩光平 佐世保重工業(株)設計部船体設計課 |