(株)佐世保重工業(株)設計部BWMSプロジェクトグループ 船津哲也
BWMSプロジェクトグループに着任して6年目になります。BWMS設置に関する初期検討のみは150隻以上、設計図面作成に於いては13隻、その内10隻は工事施工済です。本稿では当社にて設計を行い、中国修繕ヤードで設置工事を行った事例を紹介します。
|
---|
CAPE-SIZEの設計は当社に於いて3隻目となりましたので、以前の設計により蓄積されたデータをフル活用して取り組みました。BWMS機器の処理方法により管本数・物量が大きく変わります。当然物量が増えるということは取付け工数も増加し、配管設置が複雑になってきます。しかも追加設置機器等のメンテナンススペースを考慮しなくてなりません。設計者の技量の見せ所です。
1) 移動及びKICK OFFミーティング
2015年11月9日、小職と当社修繕工事担当のA氏と2人、福岡空港から上海に向かいました。翌日、上海から1日かけて修繕ヤードのある島へ移動し、中国で通算5回目の工事立合いが始まりました。11月11日、某修繕ヤードへは約2年2カ月ぶりの再訪で、午後からKICK OFFミーティング、そこに見覚えのある顔があり、向こうも此方に気づき再会を喜びあいました。
前回工事時は機関部の工事担当者だったR君(30歳位)が、今回は工事責任者 (マネージャー) との事であり、彼だけでなく中国ヤードのスタッフ全員が非常に若い方ばかりでした。ミーティング中、本船の入港が遅れるとのことで、ならばヤードでの加工製作品のチェックを開始しました。今回、本船が遅延したために事前にチェックを出来た事が大いに役立ちました。
![]() 機器及び配管取付け [拡大画像] |
![]() 修繕ヤードのドック風景 [拡大画像] |
2) BWMS工事着手
本船が着岸したのはミーティングから2日後の事でした。当初は5〜6日岸壁工事の予定でしたが、天候及びドック繰りの関係で2週間の岸壁工事となりました。先ずは不要配管の撤去から始めましたが、船外弁しか海水流入を防ぐ手だてが無く不安でした。
船外弁を閉じた後、管内の海水をバラストタンク内に落として、ポンプ入口の空気を抜いて弁を徐々に開放し、海水の吹き出しが無い事を確認して一安心しました。配管撤去を始めた夜に不要配管の撤去完了となりました。単純作業は人海戦術で驚くほど速く、ヤードに於いて昼夜分かたず行ったBWMS取り付けの作業員は平均30名程でした。
3) 機器・配管の搬入及び取付工事
機器及び配管の搬入・取付けでは、搬入口として機関室前の壁を一部開口し、ホールドを仮置き場として順序良く搬入できた事が工期短縮に繋がりました。機器搬入について我々が「No Damage」と再三注意した為、我々の注意を面倒に思ったのか、我々のいない夜間に全ての機器搬入をダメージ無く終わらせていました。
4) 機器及び配管取付け後
機器・配管等の取付けもあらかた完了し、最終段階の配管リークテストでトラブル発生!ケミカルラインの水通し試験において、工事担当者に「フランジの増し締めは大丈夫か」と確認したにも拘らず、テストを始めるとその系統の全てのフランジから水が!水滴ではなくシャワーの様に吹き出しました。この事件は「RAIN IN ENGINE ROOM」と語りつがれる事となりました。増し締めを行っておらず仮組状態のままテストを行った事が原因でした。
その後、工事自体は大きな問題も無く本船着岸からほぼ2週間でBWMS設置工事の完工となりました。工事前には1カ月程度の工程を予測していましたが、移動日を含め丁度3週間で帰国できた事はかなりの自信になりました。
![]() ヤードの昼食 [拡大画像] |
5) 中国での取付工事に於いて小職が思う留意点
まだ沢山ありますが、今回の工事に於いては工事自体おおよそ順調に運び、船主殿にも御満足頂いたものと自負しています。今後も当社での設置工事はもとより、海外での設置工事も頑張ってまいります。
![]() |
船津哲也 佐世保重工業(株)設計部BWMSプロジェクトグループ 機関設計 |
---|