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油圧式潮流発電について

佐世保重工業(株)経営管理本部企画部事業開発グループ 星野和信

平成22年に佐世保重工業株式会社へ入社し事業開発グループへ配属されて以来、6年間様々な業務に従事してきました。本記事では、私が最も長く携わった「油圧式潮流発電」の研究開発業務について紹介します。

当社は東京大学、九州大学と共同で国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) から「油圧式潮流発電の要素技術」の研究開発業務 (H24年度〜H27年度) を受託しました。私は本業務に研究員として従事しました。

潮流発電とは潮の満ち引きによって発生する水平方向の流れのエネルギーをロータ (プロペラ) によって機械的な回転力に変換し、その回転力で発電機を回し、電気を発生させるものです。様々なところで導入されている風力発電は風のエネルギーをロータ (プロペラ) によって機械的な回転力に変換し、発電しています。

油圧式潮流発電システムの概要
油圧式潮流発電システムの概要
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「油圧式潮流発電」は右図のようにロータと海上の発電機を油圧システムで連結させた潮流発電です。潮流の上潮、下潮に対応するため、ナセルの前後にロータを配置し (ダブルロータ)、欧米に比べ流速が遅い我が国の条件でも十分な出力を得るため、ツインナセル形式を採用しています。

電気事業法の使用前検査に対応するため、発電機、発電した電力を商用電力へ整流するパワーコンディショナーを海面上に設置し、検査が容易にできる構造にしています。左右2つのロータの回転力を油圧ポンプによって作動油の圧力・流量へと変換し、計4台のポンプの油圧エネルギーを斜板オイルモータ2個に導き、回転数を同調させることで1つの発電機を回転させるという構成となっています。

当社は本開発で油圧システムを担当しました。東京大学と協力して20kWの試験装置試作機の製作・試験を実施しました。本試験から得られた知見やデータを基に回路構成の方針を決め、当社内に100kW油圧システムの試験装置を製作し、試験や油圧回路の改善を行いました。

100kW油圧システムの試験装置
100kW油圧システムの試験装置
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本試験装置は写真のように、(1)ロータの回転を模擬する駆動部、(2)ロータの回転力を発電機へ伝える油圧部、(3)発電された電気を整流する発電部 (パワコン) の3つの部分によって構成されています。

潮流発電装置の数値計算による出力予想
潮流発電装置の数値計算による出力予想
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九州大学からは設置候補海域の潮流速データを、東京大学からはロータの特性の提供していただきました。これらのデータを基に100kW油圧システムのフルスケール試験装置による試験を実施しました。その結果、ロータの回転エネルギーを電気へと変換することができ、得られた試験データから油圧システムの効率が求まりました。

100kW油圧システム試験で得られた効率をもとに潮流発電装置の出力の予測をしました。右図のように流速の小さい部分では発電装置維持のための所内消費電力が大きくなるため待機状態とし、設計流速の40%から発電を開始します。設計値の90%を超えてくると発電量が定格出力を超えてしまうため、ロータへブレーキをかけシステムを停止 (カットアウト) します。

今後、海域での実証試験を実施できれば、今回の油圧発電システムの技術的な成立性を実証でき、抽出された技術的問題点を改良することで実用的な潮流発電装置の実現が期待できます。本油圧式潮流発電装置が潮流発電プラントとして実用化され、広く普及することでCO2削減が期待できます。

最後に、東京大学、九州大学、NEDOの関係者の皆様の御協力に感謝いたします。




星野和信 星野和信
佐世保重工業(株)経営管理本部企画部事業開発グループ
海洋エネルギー

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