ジャパン マリンユナイテッド(株)有明事業所設計部電気設計グループ 篠﨑 亘
排熱回収システムの機器構成
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2014年6月16日に引き渡したS.No.188 "Azul Brisa" の処女航海に乗船する機会がありましたので、船の状況と感想を報告します。
本船は当社開発のG209BCの第5番船で、排熱回収システムという省エネプラントを搭載しており、これらのプラントの状況確認、トラブル対応及び乗組員への取扱説明を主目的として乗船しました。
排熱回収システムとは、主機の排ガスエネルギーで過給機を回し、その余剰エネルギーで発電するTurbo-Charger Generatorと、高温の排ガスから排ガスエコノマイザにて生成した蒸気で駆動し発電するTurbo Generatorの2つの発電機で船内電力を賄い、さらに、船内電力分を差し引いた余剰電力を推進加勢にかえるShaft Motorから構成されます。
これら機器は主配電盤内のPower Management Systemにより船内電力、発電量とともにトータルで最適に制御され、通常航海中におけるディーゼル発電機の使用を抑え、推進加勢による主機負荷低減に貢献し、船の燃料消費量を削減します。
排熱回収システムは複雑で特殊な機関プラントであり、当社としても経験が浅いものでしたので、乗船中、本プラント特有のトラブルが発生した際は、その対応に大変苦労しました。当然、本船クルーにとっても初体験のプラントであったため、最初のころは、トラブル対応はおろか、排熱回収システムのオペレーションもままならないような状態でした。
しかしながら、クルーに対し積極的にプラントの説明やオペレーションの説明を実施し、一緒にトラブルを解決していく中で、いつの間にか排熱回収システムについて、かなり理解を深められていたようで、最終的にはほとんど私からのアドバイスを必要とせずに、スムーズなオペレーションを行っていました。
乗船は、有明事業所出航後、シンガポールで燃料補給し、積荷港のブラジル・ツバラオ港までの約40日間でしたが、その間に運航に関わるような大きなトラブルはなく、無事ブラジルで下船することができました。本船クルーは21名で全員フィリピン人、クルー以外に、日本人が私のほかに船主殿監督官1名 (シンガポールで下船)、主機メーカ殿保証技師2名の4名が乗船していました。クルーも気さくな方ばかりでしたので、コミュニケーションも取りやすく、船内生活やこれまでの体験談など様々な話を聞くことができ、大変勉強になりました。
乗船を終え、設計段階からずっと携わってきた排熱回収システムを無事に完遂させたことは、私自身にとって非常に大きな経験となりました。また、電気設計という立場でありながら、今回のような特殊な業務に携われたことにより、普段だとあまり気にしない機関部、船体部の運用やトラブルに触れ、より一層、船全体の理解を深めるのに役立ちました。今回得られた貴重な経験を今後の業務に生かしていきたいと思います。
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篠﨑 亘 ジャパン マリンユナイテッド(株)有明事業所設計部電気設計グループ 電気設計 |
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