(株)大島造船所鉄構部CS推進課 前田 穣
長崎県諫早市南部に、諫早インターチェンジから島原半島方面をつなぐ高規格道路が建設中です。当社は、その一部を構成する「河川4号橋(仮称)」の橋げた部分と路面部分、橋台との連結部分を施工しました。
「河川4号橋(仮称)」は、鋼コンクリート複合ポータルラーメン橋とよばれる、鋼製の橋げたとコンクリート橋台を剛結した構造形式で、路面に伸縮装置が不要なのでジョイントレス構造とも呼ばれます (構造上の特徴については、西部支部メールマガジン第43号を参照ください)。
鋼桁を橋台に架設後、コンクリートでこれらを剛結するのですが、分厚く、体積の大きいコンクリート構造であるため、温度差ひび割れの発生が懸念されました。コンクリートが硬化する際、セメントと水が反応して水和熱が生じます。これによりコンクリート躯体の温度が上昇 (体積は膨張) し、反応が収まると徐々に低下 (収縮) するのですが、その過程で躯体の内側と外側との間に温度差=体積変化の差異が生まれ、その結果、内側 (膨張) と外側 (収縮) のコンクリートが互いに体積変化を拘束し合った結果、コンリートに引張力が生じて温度差ひび割れが起こります。
このひび割れ対策として、水和熱を抑制できるフライアッシュ (FA) コンクリートを適用しました。フライアッシュとは発電所などで生じる石炭灰で、これをコンクリートの混和剤として使用すると、水和熱の抑制、コンクリートの流動性向上、密実性向上、長期強度の改善といった効果があります (ただし、強度発現に通常の2倍の8週間を要します)。採用にあたっては、事前に供試体の温度変化計測と温度解析を行ってひび割れ指数が改善されることを確認し、それでも厳しい部分には、あらかじめひび割れ防止ネットを埋設することとしました。その結果、有害なひび割れは全く発生せず、密実で外観もきれいなコンクリートを施工できました。
この道路が完成すると、島原半島へのアクセスが大変円滑になり、観光促進、経済の活性化、地域医療の改善といった効果が期待されています。島原半島には、温泉や史跡、ジオパークなど数々の魅力的な観光スポットがあります。長崎へお越しの際は「河川4号橋(仮称)」を通って、島原半島にもぜひ足をお運び下さい。
前田 穣 (株)大島造船所鉄構部CS推進課 橋梁・鋼構造物 |