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NOx Tier III 適用船の開発

常石造船(株)商品企画部機電計画グループ 末重洋一、岡﨑健太郎

船舶のエンジンから排出される窒素酸化物 (NOx) 等の大気汚染物質の規制は、MARPOL条約付属書VIに規定されており、これまで段階的に規制が強化されてきました。2016年1月1日以降の建造船からは北米・カリブ海等の排出規制海域において1次規制値よりNOxを80%削減するNOx3次規制 (NOx Tier III) が課せられています。

一般的に、NOx Tier IIIに対応するためには2通りの手法が知られています。1つは、燃焼後の排気ガスの一部を再度燃焼室に再循環させる排気再循環システム (EGR : Exhaust Gas Recirculation)。もう1つは、排気ガス中に尿素水を噴射し、反応器の触媒作用によりNOxを還元する選択式触媒還元脱硝装置 (SCR : Selective Catalytic Reduction) です。

LSF-EGRを搭載した6G60ME-C9
LSF-EGRを搭載した6G60ME-C9
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常石造船ではこれら2つの手法に関してコスト/機能/配置等の様々な検討を実施してきました。この度開発を完了したプロダクトタンカー (LR1) はその主な運航エリアにUSガルフが含まれていたこともあり、又、今後のLR1プロダクトタンカーのフラグシップになって欲しいという想いもあり、NOx Tier IIIに標準で対応する方針としました。検討の結果、主機関として三井造船株式会社のLSF-EGRを装備した6G60ME-C9-EGRBPを採用しました。尚、発電機関に対してはSCRを採用しました。

EGRやSCRでは、水酸化ナトリウムや尿素水と言ったこれまでの一般商船にはなじみの薄い薬品を使用しますが、薬品の取扱方法や関連設備の規定が明確にはなっていなかったため、メーカー各社と協議を重ねて安全面を最優先した薬品の取扱方法を決定しました。

さらに、NOx Tier IIIに対応するためには新しい機器やタンクを機関室内に配置しなければなりません。機関室をコンパクトにして荷物の積載能力を高めるためにも斬新で画期的な配置を考案する必要があります。本船では、機関室全体として効率的な配置を検討し、限りあるスペースを有効に活用することでよりコンパクトで使いやすい機関室となっています。

本船の主機関はLSF対応のEGRとしては国内初号機であり、その上、弊社としてもNOx Tier III対応の初番船でもありますので、検討課題も多く開発は難航しました。初物ゆえに色々な課題が出てきますが、これらを一つ一つクリアにしていく過程こそルール及びシステムを採用していく上での醍醐味と思いますし、新しいルール対応についての弊社のスタンスを示せた事が大きな収穫ではないかと考えております。

現在、本船は詳細設計段階まで進んでおります。設計-建造-引き渡しを経て、就航後には、船主殿御協力の下、主機メーカーであります三井造船株式会社殿と共同で実海域においてLSF-EGRシステムの検証を行う予定となっています。

LR1プロダクトタンカーCGイメージ
LR1プロダクトタンカーCGイメージ
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末重洋一岡崎健太郎   末重洋一、岡﨑健太郎
常石造船(株)商品企画部機電計画グループ
基本設計(機関部)

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